あなたの隣で笑うのはわたし +ハイキュー!!・夜久衛輔 *年齢操作、恋人。ヒロイン視点。 誕生日。 *** 彼の誕生日まで残り一時間をきった、もう準備は整っている。 目の前には自分が作った簡単なケーキ、それのみだ。 これも全て明日誕生日を迎える彼氏の為に、わざわざ手作りで作ったもの。 当の本人は大学の集まりで遅くなるとかなんとか言ってたから、食べるのは結局明日になるのかな。そう一人でぼうっと考えながら時間が過ぎるのを待つ。 日付が変わる前には絶対になまえの家に行くから!という文面でメールが送られてきたのはつい二時間程前。 私としては日付が変わった瞬間に「おめでとう」って一番に言いたいのだけど…集まりがあって遅くなるならしょうがない。 現実的に考えると難しい話し、でもやっぱり「誕生日おめでとう」くらいは一番に言いたい。それは衛輔の彼女である私の小さな我が儘。 「にしても、遅いなー…」 日付が変わるまでは残り四十分ほど。 遅いなぁ、なんて考えていると自然と睡魔が襲ってくる、珍しく手作りなんて頑張ってしまったせいだろうか。 机でうとうとしてしまう。ダメだ、ここで寝たら絶対に衛輔に会えない。 頑なに落ちそうになる思考を保っていたけど、眠気には勝てずに重くなる目蓋は閉じていった。 何分経ったのだろう、薄っすら目蓋を開けぼうっとする頭で自分が寝てしまった事を思い出すと同時にガバと勢いよく起き上がる。 壁に掛っている時計を見る。既に日付が超えてしまっているではないか、やってしまった。 衛輔からの連絡と思って携帯を取り出してみるが特に連絡は入っておらず、連絡を期待していた分ショックが大きくて、顔を俯かせて重い溜め息を吐く。 「なんでそんな重い溜め息吐いてんだよ」 突如聞こえた彼の声にビックリして顔を上げる。 顔を上げて視線を向けた先にいたのはまだ帰ってきてないと思っていた衛輔、本人で。 「え、な、んで」 「だって俺、ちゃんと十二時ピッタリに来たんだぜ?合鍵使って入ったら、なまえ机に突っ伏して寝てたからさー」 起こすの悪いと思って起こさなかった、と男らしい笑みを浮かべて私の真正面に座る衛輔に、驚きすぎて言葉も出てこない。 呆然とする私を見て楽しそうに笑う衛輔の手には私が作った簡単なホールケーキを持っている。 「で。これはなまえから俺にって事で良いわけ?」 「あ、うん」 「手作りだよな?」 「久し振りに手作りしたから、自信は無いんだけど。良ければ明日にでも」 食べてよ。と言葉を漏らすと衛輔は「明日なんて言わず、今食べようぜ!」と先程と同じ笑顔で言ってくる。屈託ない笑顔で言われてしまったら断れない…! フォークとお皿を二つずつ、更にお茶も用意していると衛輔から急に、なあ、と控えめに声が掛かる。 「なに?」 「なまえから、何もないの?」 主語がない衛輔からの言葉に何を言いたいのかは直ぐにわかった。それはもちろん「形」としての物って事じゃなくて「言葉」が欲しいんだと直ぐにわかる。 「…だって、十二時ピッタリに言えなかったから、」 「そんなんどうでも良いだろ。ちなみに言うけど俺、十二時過ぎてから携帯触ってないし見てないからな」 「え」 「当然だろ。他の奴からのよりも、誕生日の一番は、彼女から聞きたいし」 言われてみれば衛輔のカバンは机からだいぶ離れたソファにあるし、基本的に一緒にいてくれる時は携帯を弄らないんだ。 その言葉を聞いて安心すると衛輔の隣まで行き、ギュッと抱き付いた。 「衛輔」 「うん」 「誕生日、おめでとう。生まれてきてくれて、傍にいてくれてありがとう」 「ん。ありがとう、なまえ」 抱き付いた私を優しく抱き締め返してくれる衛輔。彼に祝いの言葉を伝えると嬉しそうな声色で彼が笑った気がして。些細な事が嬉しくて、私も自然と笑みが溢れた。 |