甘いよりもしあわせな



+ハイキュー!!・二口堅治
*恋人。二口視点。 誕生日。


***


「堅治ー!」
「あ?なん、」

だよ、と言葉を発する前に何かを投げ付けてきたのは恋人のなまえ。それは俺の顔面に見事にヒットした、…いきなりご挨拶だな。

投げ付けられた物は自然と俺の足元に落ちてきた。何を投げ付けてきたんだと思って見てみるとクッションで…なんでクッション?
むっとした表情でなまえを見ると、あっちはあっちで「ナイス顔面キャッチ!」なんて言っておかしそうに笑ってから俺を見つめてくる。

「なに?」
「なにじゃねーよ、そりゃこっちの台詞。なんでクッションなんて投げてくんだよ」
「え、誕生日プレゼントなんだけど?」
「は?誕生日プレゼント?」
「11月10日は確か私の記憶では二口堅治くんの誕生日では無かったっけ?」

わざとらしく手帳を出して咳払いをし、俺の方を見ないで言葉にする彼女。今日は俺の誕生日か、すっかり忘れてたわ。
だから珍しく「部活終わりに堅治の部屋に行きたい」とか言い出したのか。

「で、なんでクッション?」
「私があって嬉しい物を堅治にプレゼントしてみた!」
「いや、意味解んねーし」
「本当は堅治の好きなものにしようかと思ったんだけど、すっぱいグミでしょ?それだけじゃ物足りないと思って」

言いながらもいつの間にやら手元に持っていたすっぱいグミを俺に手渡してくる。なんだかんだ準備良いんだよな、コイツ。

「今年の私からの誕生日プレゼントはその二つです!!」
「あー、はいはい。サンキュ」

にこにこと笑顔で告げてくるなまえを軽く流すように、グミを口の中に放り入れ咀嚼する。噛み砕いた時に溢れ出るすっぱさが口内に広がって思わず顔を顰める。けど、このすっぱさが美味いんだよな。

グミを食っている間、なまえは俺の隣に座って俺にプレゼントしたクッションを抱き抱えながら「グミ美味しい?」なんて聞いてくるから素直に頷く。
ていうか、そのクッションお前が俺にくれたやつじゃねーかよ、なんでお前が抱き抱えてんだよ。といつもの一言が思い付いたけど抱き抱えているなまえが可愛かったから特に何も言わないでおく。この可愛いって思ったっていうのも言おうとは思ってねーけど。

…文句は言うつもりは更々ない。でも俺的にはクッションじゃなくて。

「わっ!け、堅治?」

隣に座っているなまえをクッションごと前から抱き締めれば、驚きの声を上げる彼女。ああ、やっぱり。

「…俺的にはクッションじゃなくて、お前で良いんだけどなー」
「え?」
「抱き心地、クッションより最高だし?」
「!」

間抜けな声を上げる彼女に、にやりと笑って見せれば意味を理解したのか一気に紅潮する。でも抵抗する気はないのか大人しく抱き締められたままだ。

「…堅治ってたまに恥ずかしい事サラッと言うよね」
「そういうお前の照れる顔ってレアだよな。写メっていい?」
「ダメに決まってんでしょ!堅治のバカ、嫌い」
「嫌いなら抵抗してみろよ、抵抗する気無い癖して」

わざと耳元で笑ってやればその耳まで徐々に赤くなっていって、恥ずかしさからかなまえは手元のクッションに顔を埋めた。

「こら、顔隠すなって」
「ううう無理。なんなのバカ堅治」
「さっきからそれしか言ってねーなお前。そこまで言うなら無理やりにでも没収でーす」
「あ!」

俺となまえの間にあったクッションを奪ってなまえの手の届かない所にぶん投げる。クッションで顔を隠していたなまえはそれが無くなった事により、俺の前に顔を晒し出す。

頬を紅潮させたままのなまえは最初目を逸らしていたけど次第に諦めたように俺と視線を絡ませる。頬を赤く染めた彼女を見ながら重要な事を思い出した。

「お前からまだ言われてねーんだけど」
「…え?」
「プレゼントは貰ったけど。直接言われてねーし」
「あ、そういえば」

「すっかり忘れてた」と零してからへらっと赤い顔で笑う彼女。少しだけ俺から目線を外して言葉を紡ぐ。

「堅治、誕生日おめでと!」
「ん、サンキュー」
「これからもずっと傍で応援させてね!」

最後に笑顔で言い放ってから俺に自分からギュッと抱き付いてくる。なんだよそれ反則じゃんか。ついつい口元に浮かぶ笑みは隠せなくて「当然だろ」って小さく言葉を漏らしてから、抱き付いてくる彼女の頭をそっと撫でてやった。






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