*恋人・同棲している
*一般人彼女・同い年


***


「ジュンくん、これ」

それは帰宅しご飯を食べ終え、風呂から上がって一息吐いた時だった。
疲れていた身体を癒す為にソファに腰掛け寛いでいると、なまえから白い包装紙に青いリボンがあしらわれている小さい箱を手渡される。いつもだったら不思議に思う所だけど、今日ばかりは俺でもその答えは分かっている。

「チョコ、っすね」
「うん、そうです。去年とは違うものにしてみました」

「ジュンくんの口に合えば良いんだけど」そう言いながら俺の隣に腰掛けて、なまえは様子を窺っている。そうは言うけど、今までくれた物で手作りでも市販のものでも口に合わなかったもんなんてほぼ無かったと思うけど。…なんて内心思いながら、彼女からチョコを貰えたという事実だけはやっぱり嬉しくてつい口元は緩んでしまう。それを悟られないように「開けても良いっすか」と伺い立てれば、小さく頷いてくれた。
ゆっくりとリボンを解いていき破かないように包装紙を綺麗に開けていくと、ベージュの箱が顔を覗かせた。そっと蓋を開けてみれば、ココアパウダーがかかっている生チョコが12個、綺麗にそこにおさまっている。

「渡した事無かったなって思って。生チョコ」
「そっすね。去年は確か……ガトーショコラでしたっけ」
「うん。…って言っても、去年は市販のものだから」
「てことは、今年は手作り?」

並んでいる生チョコに視線を送ってから、流れるように彼女の方へと視線を移す。彼女は少しだけ恥ずかしそうにしながら「たまには挑戦してみたくなったもので」と言って俺と視線を交差させた。

「あの、一応レシピ通り作ってはあるから…!味は大丈夫だと思う…」
「なんでそんな自信無さげなんです?生チョコなんてそう失敗なんてするもんでもないでしょ」

不安がるなまえを安心させるように行儀が悪いと分かっていながらも、並んでいる生チョコの一個を指で摘まんでから、自分の口の中へと運ぶ。甘い香りと共に口の中で広がり溶けていくそれは、少しだけビター風味でその中に僅かに甘さを感じられる。その僅かな甘さがなんだか止まらなくて「美味い」と零してからもう一個摘まんで同じように口の中に生チョコを放った。

「…どんどん減ってく」
「美味かったんでつい。て、こんな大量に食ったらまたおひいさんになんか言われるかもしれねえっすけど」
「でも、それほど気に入ってくれたって事だよね?…ありがとう」

もう半分は食べてしまった生チョコを見て、なまえは嬉しそうに笑う。そんな彼女に釣られて俺も笑ってから、残りの半分はまた別日にしようと蓋を閉めた。
「気に入ってくれたなら、日頃からもう少し作ってみようかな」と零す彼女の呟きを遠くで聞きながら、俺は来月に迫るお返しを何にしようか悩むのだった。


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