星屑シュガードロップ 


*カナメ視点。
*九条の親戚。たまに用事があって九条邸に出入りしている・九条家メンバーとは顔見知り。九条家の内情をそこまで知らない。


***


「カナメくんって、気になる子とか好きな子いないの?」

九条邸のリビングでスマホを弄っていた俺に唐突に問い掛けてきたのは、同じくリビングで寛いでいた九条さんの親戚のなまえさんだった。
いきなりの問い掛けに、眉間に皺を寄せてなまえさんを見つめる。いきなりの問い掛けすぎる。

「何、いきなり。どうしたの」
「えっと、この間お客さんで高校生の子が来たんだけど、恋やらなんやらの話しをひたすら話してくれたの。で、私の一番身近にいる高校生ってカナメくんだったから、どうなんだろうな、って思って」

楽しそうに、にこにこと俺の真正面に座って笑みを浮かべたなまえさんが言葉を続ける。
彼女の仕事はなんだったか、確か美容師なんだと前に話してくれた気がする。それならば、高校生を相手にして話しが盛り上がるのもなんとなく分かる気がする。
からかうとかそういうわけではなく、純粋な興味からの疑問なんだろうけど答える義理は無いし、答えを持っていたとしても想いを抱いている本人の前で言える筈もない。

「…俺よりも、なまえさんはどうなの?」
「私?」

話しの主題を彼女自身に持っていけば、不思議そうに首を傾げる。彼女だって20代半ばなんだし、そういった話題が会社内であってもおかしくない。さりげなく彼女の事を知る機会だと思って話しを振ってみればなまえさんは手をひらひらと顔の前で振ってみせた。

「私なんて全然…!今は仕事でいっぱいいっぱいだし、漸く落ち着いて好きな仕事に就けたから今はそれどころじゃないよ」
「へえ。そうなんだ」
「そうだよ。漸く慣れてきた所で、まだまだ覚える事いっぱいだし…!」
「そっか。でも、なまえさん彼氏とかいそうだと思ったんだけど」
「え、いないよ?!」

俺からの質問が予想外だったのか、ほんの少しだけ頬を赤くして否定の言葉を発するなまえさん。その手に持っていたカップを落としそうになるくらいには動揺したみたいだ。
そっか、いないんだ。その回答に内心安堵しつつも、彼女の目を見つめながら言葉を続ける。

「単純に。なまえさん、モテそうだなって思ったから」
「モテないよ?!カナメくんそれ私のどこを見て言ってるの…?」
「全体的に。雰囲気とかもそうだけど、しっかりしてそうだし…。あ、でもたまに抜けてそう」
「褒めてくれたのかと思ったら、褒められてない…!」
「でも、そんな抜けてる所もなまえさんらしくて可愛いよね」

思った事を素直に本心で紡ぐ。紡がれた一言に先程よりも顔を赤くしたなまえさんが「か、からかわないで…!」と顔を両手で覆いながら小さく小さく呟く。からかいだけで、こんな事言えないんだけど。

「わ、私よりもカナメくんは…?!好きな子とか…!まだ回答聞いてないんだけどな…!」
「…好きな子」

最初に問い掛けられた質問を再度されて、顎に手を添えて考える。そんなの、なまえさんに出会って、自然と目で追うようになってから答えは決まっていた。
顔を覆い隠してしまっている彼女の手の先に触れて、その手に優しくキスを落とす。突然の事に驚いたなまえさんは、なんとも言えない声を上げて覆い隠していた両手を顔から離して、俺の事を見てくる。

「ちょ、カナメくん…?!」

近距離で見つめ合う視線は合わさったまま。綺麗な瞳に見つめられて心臓が早鐘を打っているのが分かる。そのまま彼女の長く傷みのない髪を指でそっと掬い上げて優しく耳にかけてあげてから、一房その髪に優しく口付けを落としてあげる。

「あ、の…!」
「なまえさん。髪にキスする意味、知ってる?」

優しく彼女の髪を梳いて視線が合わさったまま訊ねてみれば、混乱しているのか「えっと、」などともごもごと口籠っている。この反応は恐らくどこかしらでは耳にした事があるって事かな。

「(髪にキスする意味は、思慕。俺が好きなのは、なまえさんだよ)」

口角を上げて笑みを浮かべて見せる。もう一度、彼女の綺麗な髪を掬い上げて口付けを落とせば今度はぴくりと肩を震わせるのが見えた。

「仕事一途ななまえさんでも、関係ないよ」
「か、カナメ、くんっ…」
「俺はなまえさんの事、諦めるつもりないから。…だから覚悟しててね、お姉さん」

まだハッキリと「好き」とは口にしない。だけど、これで少しは俺の事男として意識してくれてれば嬉しいんだけど。
そんな想いを込めてもう一度だけ彼女の髪に優しくキスを落として、彼女の事をぎゅっと優しく抱き締めた。



 

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