ことばにできない愛もある 


*恋人設定。ヒロイン視点。
*マトリ所属の同期。夢主≠泉玲


***


「前から気になってたんだけどさ、俺のどこを好きになってくれたの?」
「え?」

きらきらとした眼差しを向けられて訊ねられた質問に思わず間抜けな言葉が自分の口から零れ落ちる。そんな私の事なんかお構いなしに目の前にいる彼、夏樹はこちらに視線を送り続けながらにこにこと笑みを浮かべている。

「…と、言うと?」
「だから、なまえは俺のどこが好き?」

彼の直球すぎる質問にぐっと言葉を詰まらせる。いつも直球だとは思ったけど、まさかのそんな質問が来るとは思わなかった、と少しだけ頭を抱える。

頭を抱えながらも彼からの質問の答えを探すべく、自分の頭の中を整理する。

最初に合同捜査でペアを組んだ時に助けてくれたりとか、細かい仕事が苦手かと思いきや意外と出来たりする所とか、好きな物食べてる時の笑顔とか、困ってる人を放っておけない気遣いの細かさとか、私が落ち込んでたら真っ先に気付いてくれたりとか…。
考えれば考えるほど何個も思い浮かんでうまく整理しきれない。好きな部分の方が多いからしょうがないんだけど…。とか言ったら調子に乗りそうだから、そこは心の中に留めておこう。
ちらりと視線を夏樹に向ければ、にこにこと笑みを浮かべて私を見つめたまま。…この笑顔も、好き、なんだよね。

「えっ、俺そんな難しい質問した?」
「いや…あの、うーん…。纏まらなくて…」
「なーにそれ。んー…それって、俺の事好きすぎて纏まらないとか、そういう事?」

少しだけ悪戯っぽく笑いながら問い掛けてきた彼の質問に、間を置いてから小さく頷く。間違っては無いし、本心である事は間違ってないから…という意味合いだけども。
その後直ぐに恥ずかしくなってつい視線を外そうとしたけども、横目で少し視界に入った夏樹の頬は、少しだけ赤みを増していた。

「夏樹…?」
「あー…いや、まさかなまえが俺の言葉にそんな素直に真剣に頷いてくれるとは思わなくて」
「え?」
「俺の事、すげー好きでいてくれてるんだなあ、って思ったらめちゃくちゃ嬉しくてさ。すっげー愛されてるってことじゃん」

嬉しそうに目を細めて笑いながらくしゃりと私の頭を優しく撫でてくれる。そのまま耳元に唇を寄せられてちゅっと口付けを落とされれば、変な声が思わず漏れてしまった。

「ひぇっ」
「あはは、なにその声。可愛いな〜。…俺もね、そういう風に一々可愛い反応してくれる所も含めて全部、なまえの事が大好きなんだよ」

耳元に寄せられた唇は離されて、今度は額と額がくっつくくらいに顔を寄せられて言葉を紡がれる。夏樹の顔が近距離で、鋭い眼差しが私の事をじっと見つめていて、そっと優しく唇を塞がれて。直ぐに離されたそれと満足そうに笑う夏樹に、じんわりと頬に熱が集まるのを感じた。

「…な、夏樹っ…!」
「なまえ顔真っ赤〜。…こういう表情、俺だけしか見れないって考えたらやっぱり嬉しい優越感だな〜」
「も、もう色々…反則だよ…!」
「えー?本当の事しか言ってないんだけど?」

両手をぎゅっと握られながら無邪気に笑いかけられれば、もう何も言えなくなってしまってもう一度ぐっと言葉に詰まる。…そうやって全部率直に褒めてくれたりする所を含めて、私だって夏樹の事が大好きなんだよ、の言葉を言いたいけど、たぶん言ったらまた恥ずかしくなって顔を見ることが出来ないからそっと心の内にしまっておく。
…あーあ、私もちゃんと夏樹の顔をしっかりと見ながら、想いを全部伝える日が来ればいいなあ。


 

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