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嬉しい一言

 


私は鷹臣くんがめちゃくちゃ怖い。




「真冬、俺を殴ってみろ」

「うぇ!?」

「殴ってみろ」



鷹臣君は私の目の前にしゃがんで、「ここ」と自分の頬を指した。



「え、…えーい」



私はうさちゃんにかわりに鷹臣君を殴ってもらった。うさちゃんの拳が鷹臣くんの頬にぽふりと当たった。



「や、やったー……」

「……ぶっ飛ばすぞ。本気でやれ」

「ええええ!!?急に何なの!?」



鷹臣君は真剣な表情のままだ。一層恐怖心がつのる。



「真冬にもそろそろガチの喧嘩デビューさせてみようかと思って、テストだ」

「いいよいいよ!!デビューしたくないし!!」

「いずれデビューするんだ。早いに越したことはない。」

「わたしはヤンキーにならないってば!」

「いいから本気で殴れ」

「えぇぇ……」




鷹臣くんの真剣な目が怖くて、でもそんな恐怖の対象を殴ることが怖くて、でもでも殴らないとこっちが本当にぶっとばされることになるので……私はうさちゃんを近くに下ろし、拳に力を入れた。



真っ直ぐ鷹臣君を見つめる。やっぱり怖い。



でも殴らないと、でも、でも、





「……やっぱり殴れないよ」





私は拳を解いた。

鷹臣君がごみを見る目で私を見たのがわかった。




「…本当にぶっ飛ばすぞ?」

「ぶっ飛ばされても、私は、何があっても鷹臣くんを殴らない。絶対に」




頑張って言い切った。
鷹臣君と私の間に沈黙が流れた。


「真冬、」


やっと聞こえてきたのは鷹臣くんの無感情な低い声。あぁ、これで人生終了か、と幼いながら感じた。



「……合格」



鷹臣くんの右手は拳を作らずに、私の頭をわしゃわしゃ撫でた。
訳がわからない私は呆然として、鷹臣くんの笑顔を見ていた。



「………へ?」

「いやー、マジで殴られたらそれこそぶっ飛ばしちまうとこだったぜ……いい忠犬っぷりだな真冬!!!」

「……な、にそれうれしくないな」


輝く笑顔で鷹臣くんは何度も何度も私の頭をポンポン(いや、バシバシか)叩いた。

うれしくないって言ったけど、本当は、鷹臣くんが本気の笑顔でほめてくれたからすごくうれしかった。









(よし、じゃあ早速喧嘩しに行くか)

(……………ハイ!!!?!)








▽補足^^;
鷹臣は本気で殴らせるつもりだったけど、真冬に「何があっても殴らない」と言われて嬉しかったのでうっかり「合格」と言ってしまった、のでした。
おぉ、補足も意味不明でスミマセンorz

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