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好奇心


もうそろそろ時間だな、と佐伯鷹臣は腕時計を確認した。今の作業が一段落ついたら職員室の鍵を閉め、今日は帰って寝るか、と佐伯はあくびをした。
同時刻、時計を確認しあくびをする佐伯鷹臣を陰から見ている者がいた。忍者である。


忍者こと、忍には一つの疑問があった。

鷹臣くんは俺達を監視(?)する立場にあり、鷹臣くんには大概の個人情報は知られているが、反対に俺たちは鷹臣くんのことを何も知らないのではないか。


「ということで手始めに鷹臣くんの住まいを探ろう思う」

時を遡り、その日の放課後の部活動中に忍は部員に提案した。
部員の早坂は微妙な反応をし、黒崎はやめておこうよと消極的な態度を示した。

「佐伯のことを知ってどうするんだよ…」
「今よりもっと仲良くなれるだろう」
「友達気分か」

忍の本意としては生徒会役員としての情報収集のためであるが、そのように捉えてもらえる方が好都合である。

「あの、住所が知りたいんだったら本人に直接聞けば良くないっすか?年賀状を出したいので住所を教えてください、とか理由をつければ佐伯先生も教えてくれるんじゃないですか?」
「確かにな」
「アッキーの言う通りだよ」
「いや、それでは簡単すぎてつまらない。だから尾行をする」
「結論が飛躍しててよくわからないんだけど…」



そして風紀部のメンバーは忍に引きずられ、部活後に鷹臣くんを尾行することになった。渋谷だけは「友達と遊ぶ約束が」と言い、1人先に帰った。
初めのうちは乗り気だったのは忍のみであったが、学校の外が暗くなるにつれて早坂くんもテンションが上がってきたようで、比較的ノリノリに仕上がっていた。真冬は、ただ自分の住まいに帰るだけなので正直どうでもよかった。ただ一つ、鷹臣くんに見つかったらやばそうだとは思っていた。


「忍者、やっぱりやめよう…」
「静かにしろよ黒崎、見つかったらどうするんだ」
「(なんで早坂くんノリノリなの)」
「しっ、静かに」


廊下から鷹臣くんの様子を探りつつ、三人は息をひそめた。

「よし、」

鷹臣くんはパソコンの電源を落とし、USBや印刷物を鞄にしまい始めた。

「帰宅か。俺たちも一旦移動するぞ」
「了解」
「(だからなんで早坂くんノリノリなんだ)」


鷹臣くんが学校を出る前に、一足先に外で待ち伏せすることになった。
しばらく校門の外で張っていると、鷹臣くんが学校から出てきた。それを30mほどの間隔をあけて尾行する。
仕事終わりで油断しきった鷹臣くんには、三人の存在尾行は気づかれないようで、鷹臣くんと真冬が住むマンションまで難なく辿り着くことができた。


「(普通に尾行成功した…!)」
「なるほどここが鷹臣くんのマンションか」
「佐伯に全然気づかれなかったな。簡単すぎて拍子抜けというか…」
「あぁ、部屋の番号まで把握してしまって正直動揺している」


忍はポケットから鷹臣くんメモと書かれた手帳を取り出し、それにメモをしていた。一体他に何がメモしてあるのか真冬は少し気になった。


「さて、今日は任務完了だ。次は休日の鷹臣くんの行動を調査しよう」

解散、と忍者が言うと、三人はそれぞれ帰路についた。




鷹臣くんの部屋の隣の部屋に帰った真冬は、1人でカップ麺をすすりながら、変な薄気味悪さを感じていた。
あの鷹臣くんが忍者の稚拙な尾行に気づかないわけがない。それなのに現実に尾行が成功してしまった。普段の鷹臣くんなら気づくところを気づかなかった、つまり体調でも悪いのだろうか?

気になってきた真冬はクソマズいラーメンを放置して隣の部屋のインターホンを押した。
鷹臣くんは帰宅してネクタイを外しただけの普通の姿で出てきた。

「鷹臣くん、あの」
「何の用だストーカー」
「、気づいてたんだ…」
「三人で学校からずっとつけてたことか」
「そうだよ。なんで気づかないフリをしたの」
「生徒の自主性を尊重したんだよ。住所を知られてマズイことがあるわけでもねぇし。指摘するのも面倒だったしな」

心底面倒くさい顔で理由を話す鷹臣くんを見て、真冬は最後に語った理由が本音なんだなぁと悟った。



おわり
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