ここどこですか、私は千鶴です「だるーい…」研修旅行のために荷造りをしていた手を止め、役目がなくなった手を前に伸ばす。そのままトランクに倒れ込めば意外にも寝心地が良いことがわかった。あ、このまま寝れるわ。「眠いー。でも荷造り終わらないー。あーうー…」最後の方は言葉にならない奇声をはっしながらムクリと起き上がる。ったく何で荷造りなんざせなあかんの?うちわるないやん!……うん、ノリで関西弁みたいになったけど、なんか違う。本場は遠いね。相澤桔梗、それが私。今年の春から医大に通い始めた、今が女真っ盛りなお年頃。一応成績は自慢じゃないけど首席をキープしている。ちなみに首席をとるために勉強はしてるからね。才能あるって羨ましい、とか言われるとカチンとくる今日のこの頃。で、話を戻すけど、今回なんで研修旅行なんてめんどくさいものに参加しなきゃいけないかというと、つまりあれだ。首席とか次席とか各学年の成績優秀者がタダで最先端医療を学ぶべく約1年間アメリカに研修をするとかいうめんどいやつだ。 「…っこいしょ」年寄りのような掛け声で立ち上がる。めんどくさくても明日は訪れるのだ。支度ができてないので飛行機に遅刻、ってだけは何としても回避したい。「………あ、ケータイ鳴ってる」やっと荷造りを再開しようとした私だったが、部屋に一時期話題になった挨拶の曲が響く。ぽぽぽぽーん。「なにこれ………?」携帯を開けば何があったのか画面一面に見慣れない漢字とカタカナの羅列。なんとか読める文字だけ追っていけば、救、という文字が何度も使われている。「イタズラメールかなぁ…」そう言いながら下まで画面をスクロールしていく。「な……っ?!」丁度最後の文字を目にした時だ。ぐらり、と世界が歪む。落ちる、と思ったときには既に世界は反転していた。“イッテラッシャイ”( 2 / 41 )[ *prev|next# ] ←back -しおりを挟む-