突きつけられた現実結局私がこの世界に千鶴として生をうけた事実は変わらなかった。あれから5年の歳月が経ち、私と薫は今年6歳、元私のいた世界なら5歳になったことになる。この5年でわかったことがいくつかある。信じれないかもしれないが、この世界は江戸時代の幕末にあたる、私のいた頃から100年以上も前の世界らしい。そしてもうひとつ、信じれないようなことがわかった。それは、私たちが鬼だということだ。初め聞いた時はまさか鬼なんてと思ったが、どうやら私の家系は東の鬼を統べているらしく、信じざるを得なかった。「ちーづーるー」薫が花冠を私に見せながら走ってくる。こんな可愛い薫が鬼だと思うと複雑な気持ちになる。私は薫が好きだ。私の片割れとして生まれて、いつも一緒にいるから。その代わり、薫以外の他人が苦手になった。だから、人見知りの振りをしてあまり誰とも関わらないでいる。この世界の両親は嫌じゃない、むしろ好きだと思う。しかし、やはり元の世界の両親と比べてしまうわけで、どうしても心の深い部分は彼らを拒んでしまう。「はい、どーぞ」「きれい!かおるありがとね!」私の元まで来た薫が私に花冠を差し出す。その姿が可愛らしく、私は微笑む。ただ、まだ5歳の私では上手く口が動かなくて呂律が回らず、たどたどしい日本語しか使えない。まったくもって恥ずかしくてたまらない。どうして前の世界とこちらの世界を合わせて24歳にもなる大人が、こんなにも滑舌が悪かろうか。泣きたくなるとはこう言うことを言うのだ。 ( 4 / 41 )[ *prev|next# ] ←back -しおりを挟む-