女はイケメンに弱い、これ絶対そんなことを考えて、欠伸を一つついたときだった。「君ってさ、ずいぶん寝起き悪いんだね」「……」先ほどからずっと私の様子を観察していた男が私に言葉を発する。私がさして何も考えずに声の主を見れば、そこには窓枠に頬杖をつきながらこちらを見つめる沖田の姿。ニコニコと笑う表情からは何を考えているかを知ることは不可能だが、その顔をこうして見ると、改めて彼が超のつくほどイケメンであることがよくわかる。さすが超人気ゲームの攻略キャラクター。今更ながら、なんでこのゲームをしっかりプレイしなかったのかが悔やまれる。イケパラじゃないか、イケパラ!……なんて思ったりしなかったり。まぁつまり、何が言いたいかというと、うん、この際だからはっきり言っちゃうけど、此所のイケメンたち、皆私のドストライクです。ストライクストライクストライクで三振です。私この人たちとなら寝れる、いや、寧ろ喜んで寝ますとも!まぁ人間が嫌いだから実際はまた別の話なんだけど、いっそ彼らが鬼だったらなぁ、なんて思ってしまうほど彼らは超イケメンなのである。「…僕の話聞いてる? 君さ、自分の状況わかってるの?」その言葉にハッとして我にかえる。いけない、つい思考があらぬ方向へ行ってしまった。刺々しい沖田の口調、だが依然として彼はよくわからない笑顔を浮かべている。その笑顔になんとなく嫌な予感がした。ただ、漠然と。恐らく私をからかっているだけなのだろうけれど、沖田の笑みにどうしても何かある気がしてしまう。「ごめんなさい。ぼーっとしてしまって」そんな不安を押し込めるために、私は気まずそうなふりをして俯いた。視界いっぱいに広がる畳。不意に、沖田から短く愉しげな笑い声がして頭を上げた。不思議に思いながら彼を見れば、沖田は私をじっと見つめている。じっとこちらを見る沖田。その翡翠の視線から逃げられない。沖田がゆっくりと口を動かす。彼の言葉を聞きたくない、本能がそう叫んでいた。「ねぇ、そろそろ本性だしたら? それ、演技でしょ?」予感が、的中した。( 31 / 41 )[ *prev|next# ] ←back -しおりを挟む-