そうです、私は嘘吐きです「私はもともと江戸で父様と二人暮らしをしておりました。ちょうど半年ほど前でしょうか、父様が仕事で京に行ったのです。初めのうちは、私が返す間もないほどたくさんの文がきていたのですが、約3ヶ月前からその文がピタリと止み、父と音信不通になってしまって…。私は心配で心配でいてもたってもいられず…」言葉の終わりを曖昧に暈す。不安に思わず顔を歪めた。その表情は演技のそれとは違う。“心配で心配でいてもたってもいられず…”そのセリフに嘘偽りはない。私は本当に心から不安だと、心配だと思っている。あえて《誰が》心配なのかを曖昧に口にしたのには意味がある。端から聞けば父親を心配している台詞に聞こえるだろうが、私が本当に心配しているのは薫だ。綱道じゃあない、薫を。「そうか、君も江戸出身なのか!父上を探して遠路はるばる京までやってくるとは、大変だっただろう…。して、君の父上は京で何を?」真剣に私の話を聞こうとする近藤。捕虜にこんなにも気をかけられる彼の人の良さにはとても感心する。でも。よく頑張った、そう言っているような彼の目は、私の中の負の感情を掘り起こす。お前みたいな人間に私の何がわかるの?私の想いの何が。お願いだからわかったような目をしないで。同情なんてされたくない、ちょうどそんなことを思ったとき、土方と目が合った。私の考えを見透かすような彼の瞳に頭の中で警報が鳴る。感情的になるな、と。雪が木から落ちたのだろう、部屋の外からバサリと音がなる。手に、嫌な汗が滲む。負の感情に埋め尽くされていた思考が冷静になるにつれて、自分の未熟さを痛感していく。この程度のことでいちいち黒い感情に飲み込まれて冷静を保てなくなるなんて。表に出てはいないと思うけれど、勘の良い彼らなら私の醜い感情に気づいてしまったのではないか。そんな不安が頭を過ったが、大丈夫だと自分に言い聞かせる。とりあえず今は余計なことは考えるべきではない。「父様は雪村綱道という蘭法医で…」「なんだと!?」気をとり直して決定的な一言を口にすれば、案の定彼らは私の言葉に食いついてくる。その反応を見て、なんとかこの場を乗りきった気がした。そのあとはもう、流れ作業だった。私が雪村綱道の娘だとわかるや否やポンポンと話は進み、結果私は屯所にいられることとなった。こうして、私の屯所生活が幕を開ける。庭に積もった雪はまだまだ溶けそうにない。そういえば、若干数名、私が女だと気づいていなかった方がいたのだけど、私に女としての魅力がないみたいですね。to be contenue...-------------無性に現パロが書きたくなるという今日この頃( 29 / 41 )[ *prev|next# ] ←back -しおりを挟む-