動き出したお伽噺「うわぁ?!」バタンッ、私の後ろを走っていた薫が躓いてこける。思わず繋いでいた手が離れた。「かおるっ!」直ぐ様薫を立たせようとしたが、それがかなうことはなかった。「かおる!やめて!かおるをはなして!!」「ちづる!にげて!」見知らぬ男たちが薫の足を持ち上げ薫を捕らえる。薫は男の手の中でじたばたと暴れるが男はびくともしない。私は全力で男を睨み付けた。「なぁ、この餓鬼じゃなくてあっちが女鬼なんじゃないか?」「いや、この餓鬼が女鬼だろ」「うーん、似すぎててわからないな」男たちはこの炎の中、そんなことを言いながら私と薫を見比べる。男たちの言う女鬼とは私のことだろう。つまり、私のことをこの男たちは捕まえにきたのだ。薫じゃない、私を。「ちづるにげて、ぼくはだいじょうぶだから!」薫は私が狙われているのがわかったのか、必死に私を逃がそうとする。しかし、私だって逃げるわけにはいかない。大事な、この世界でもっとも大切な自分の片割れだ。置いていくわけには…「!?」「あぶねぇぞ!木が倒れてくる」突然私と薫を捕らえた男たちの間に炎に焼かれ燃え盛る木が倒れてくる。上手くかわすことが出来たものの、その木が邪魔で私が薫に近づくことができない。「くそ、とりあえずこの餓鬼つれて引き返すぞ」「ああ」男たちはそう言うと薫を連れて闇へと消えていく。「待って!かおるを離して!いやだ!かおる!かおるー!!」薫がいた方へ力一杯叫んでも、既にいなくなった男たちは帰ってこない。「かおる、かおる、かおるぅ。おねがい、ひとりに、しないで」膝をついて薫の消えた方を見る。私は、何も、できなかった。薫すら、守れなかった。あのとき、薫の手を離さなければ。私がもっとしっかり手を繋いでいれば。私はなんて無力なんだろうか。私がしっかりしてれば、薫は、薫は。「か、おる…っ」もう一度そう口にしたところで、疲れはてた私は意識を闇へと手放した。最後に見た薫の表情が頭から離れなかった。無理して笑った、薫の表情が。(人間が憎い、)(それ以上に自分が憎い)(必ず、必ず助けるから)to be continue...------------なんで薫ルートができないんだろうか。←( 8 / 41 )[ *prev|next# ] ←back -しおりを挟む-