大助と京一は教室ではあまり話をしない。大助が一度話しかければ、それはもう彼の友人なのと同じな筈なのに。もしや相性が悪かったのかと思ったがそうではないようで、昼は二人で食べる姿をよく見かけた。
 食堂の一番奥の窓際の二人掛け。そこが彼等の指定席だ。

 大抵は大助が一方的に話して、京一がそれに相槌を打つか、稀にだが何か言葉を挟む。大助が彼の台詞に大笑いしているところは見るのだが、彼が笑ったところは一度も見たことがなかった。
 笑わない人間なんて、そんなものが居るとは思ってもいなかったよ。

 相変わらず笹木と倉森はそんな二人を毎回羨ましげに眺めている。


「いっそのこと、もう話しかけちゃえば?」


 俺の周りで呪詛を吐き散らすのは止めてほしい。


「馬鹿か貴様! 気安く声でもかけてみろ、面倒臭そうに相槌打たれてはいおしまい! なんだぞ!?」


「あそこで会話が成り立ってるのなんて奇跡なんだぜ!!」


 どうしてそんな人とお近づきになりたいなんて思うのか皆目見当もつかないんだけど。こいつらの思考回路はどうなってるんだろう。


 大助も大助だ。何だって他の人達を放っておいてまで京一と食べたがるのだろう。教室では目も合わせないくせに。
 そこのところが一番気になっていたから、部活のときに聞いてみた。俺と大助はなんと同じバスケ部なのだ。実力の差なんて天と地程あるけどな。


「なんでやろなー、放って置けないっちゅうか…案外、かわええとこもあるんよ、あれでも」


 エセ関西人め。回答になっていない、まったくもって。大助は関西出身ではないのだが、かっこいいからという理由だけでなんちゃって関西弁を話す。たまに標準語に戻ることがあるんだけど、その都度どきりとさせられる。


「かわいいって、あの仏頂面のどこにそんな要素が…」


「あー…笑うんよ? ちゃんと。俺もあんま見たことはないんやけど、もう、壮絶にかわええ。きゅん、ってなる」


「…………は?」


 あの鉄仮面…いやいや(そんなことを言ったら笹木達に殺されそうだ)京一が笑うのか?
 にこっ、って?
 それとも、あはは!って?

 想像できない。


 それがきっかけという訳ではないんだけど、俺も京一に話しかけてみようかと思った。
 面倒臭そうに相槌打たれてはいおしまい! …でも別にいいし。とりあえず、どんな奴なのか自分で確かめてみよう。




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