祓魔塾 連載番外編
「…に、よりて…
我…汝の…喜びに給…わりて」
「違う、給わざりて」
「あーーー!!!!もう嫌だあああ」
「詠唱騎士になる癖にこんな序章でつまづいてちゃ前途多難ねえ?」
「うっさいわアホ」
「ああん?」
「すいません」
5年前の正十字学園。
詠唱騎士になると言いながらも聖書の覚えの悪い金造の為に、放課後教室に2人残って復習をしていた。
「じゃあ7時までにここの章だけでも言える様になったら明日のお昼は私持ちね、無理なら金造の奢り!」
「無茶やろ!」
半泣きになりながら金造が抗議する。
「ちょっとくらい無茶な詰め込み方しないと入るものも入りません!」
「お前持ちってそれ奢りってことか?」
「そんなお金かかることしないわ、残念ながらお弁当よ」
「よっしゃやったらあ!!!!」
残念でした、食堂の高級料理なんて奢ってやるもんですか。
という意味合いで出した言葉だったというのに、金造は俄然やる気を出した。
「…そんなに私の手料理が食べたい?」
冗談めかしてにやりと笑いながら聞いた。
「当たり前じゃ!今週中に10章覚えたら毎日俺の弁当作れよ!」
シャーペンの頭をずいっと向けてから有無を言わさず、と言った様子で暗記に取り掛かった。
「はあ!?あんたみたいなお行儀の悪い奴に毎日お弁当なんか作るわけないでしょ!私は味の安売りはしないの!」
そう言ったのに、名前の言葉を無視して一分一秒も惜しいという空気を出しながら金造は暗記に取り掛かった。
「……んーーもう!
スーパー早く行かないと安いの売り切れちゃうから、行って来る!!ここで精々頑張りなさいよね!」
バンッと勢いよく閉まった扉に金造は締まりのない笑みを漏らした。
「はいはい、行ってきいやー」
(うわ、本当に覚えやがった金造のくせに…)
(明日のお弁当期待してまっせー?)
(…ちゃんと味わって食べなさいよ?)
金造の片想い。
ヒロインはもう今は友達だって思ってるし言い聞かせてるけど潜在的にはまだ好き、けど自覚はない。
自分の中で気持ちがハッキリしなくてぐらぐらしてる、でも悟られたくなくて強がる、でもボロが出る。そしてツンデレみたいになる。
そんな学園時代おいしいです
そのうち金造のペースに乗せられて結局毎日お弁当作って、届けがてら昼食も一緒にとるのが当たり前になって、周りからはただ夫婦だと思われてれば良い。