「愛してる」
まっすぐな、情熱的なその瞳から目が離せない。離す気なんて本当はないのかもしれない。
ずるい人だ。
自分の立場、そして私の立場を理解していながらもそんな言葉を口にする。
いけないこと。
海賊と、仮にも一国の姫。
御伽話のような恋だ。
もっとも、私達はそんなメルヘンな思考回路持ち合わせちゃいないけど。
「こんな夜更けに窓から入ってきて愛を囁くだなんて、このまま私を攫って行ってくださるのかしら」
「姫が望むなら喜んで」
かしずいて不敵に見上げて見せる彼は本当にいい男。
こんな人に私は愛されたのか。
「そうね、お父様はなかなか国から出してくださらないし、海の続く場所をこの目で見てみたいものだわ…」
ひざまづいた彼に近づきながら言葉を紡ぐ。
口角を緩くあげた彼は気取ったように左手を差し出してきた。
「破天荒な姫だな」
「でもその前に、」
見下して出された左手を右手でぱしっと払う。
「?」
「少し眠りたいわ」
御伽話のような恋の結末は3通り。
国中の祝福を受けてハッピーエンド。
涙ながらに泡になって消えるバッドエンド。
2人っきりで異国に駆け落ちなんてのもアリね。
でも私達は、
とりあえずベッドで心中するところから始めることにするわ。