「あーりーえーへん!」
電話口で大声を上げる愛しい恋人に、私は今は頭が上がらない。
「だからごめんって…」
「おまえな、26日は五番目やねんぞ!CMでやっとったわ!」
「それはCMの話やんか!私に他に男がおるとでも言いたいん?私の一番はちゃんと金造よ!」
つい頭に血がのぼって普段なら絶対言わないような少し恥ずかしい言葉まで軽々と唇を飛び越えた。
今回は私が悪い。
恋人との初のクリスマスを完全にスルーして仕事に明け暮れていた私が悪い。
年内に片付けておきたい書類を本部からわざわざ日本に持ってきて、さていっちょ片付けるかーと机に向かったのが23日。
冬休みと祭日が重なり三連休、しかも塾が三日間休み、というこの好タイミングを逃すものか!と仮眠と軽食、シャワーを挟みつつ仕事し続けて、気づけば25日。
金造から24から25の予定どうなってる?というメールにも気づかなかった。というか公用の携帯は時折見ていたが私用の方は見ていなかった。
メールを見てこの三連休に塾が都合良く休みの理由を理解した時には、25日も終わろうとしていた。
「金造ほったらかして忘れてた私が悪かったわ。ごめんなさい」
「……」
あーあーもう、すねちゃって。
私が祓魔師を生業としていく上で嫌いな言葉の内2つ。
職権乱用と公私混同。
それなのに私は本当に自分と金造に甘い。
小さな金属が穴に入って、カチャリと小さく気持ち良い音がした。
「だからこうやって会いに来たんじゃない?」
扉を開くとあぐらをかいて携帯電話を握る愛しい恋人。
こちらを見てもう見慣れてしまったびっくり顔を見せた。
「急いで来たから勝負下着じゃないんだけど、ダーリンはお相手してくれるのかしら。
それとも来年のクリスマスまで置いておく?」
あえて扉から上半身だけ覗かせると、金造はぐいっと私の腕を引いて抱きしめた。
あなたのこういう強引なところ好きよ。
「遅刻した分のプレゼントもくれんねやろ?」
「あら、私の身一つで足りるかしら」
にっこり笑ったら待ち焦がれたように求めあう深いキスをした。