初恋、はんなり京都味


「竜士さん…りゅーーじさーーーん…」

小さな声で名前を呼びながら建物内を歩き回る。

「はぁー、結局会われへんかった…」

「誰にや」

「竜士さんに…


って、え!?ふぁ、竜士さん!」

「なんかあるんやったら携帯に電話なりメールなりせえや、どないしてん?こんな夜中に」

もし彼の立場が廉兄ならきっと夜這いか?なんてからかいが来そうな場面なのに、竜士さんは心配そうに私を見下ろす。寝ていたところを起こしてしまったのだろう、浴衣がはだけていて、…その、不謹慎なのは分かってる。分かってるけど…

色っぽい。

夜で良かった、私いま顔赤い。

「あの、直接お話したくて…お泊りになられてはるて聞いてたお部屋うかがったんですがもぬけの殻で…」

「ああ、あの部屋はお前の兄貴2人がいらん事しにくるから変えたんや」

廉兄と金兄か…まったく竜士さんにご迷惑かけて…

「わざわざ探さしてすまんかったな。何か用やろ?」

「そんなっとんでもありません!

あの、えーっと、

お誕生日おめでとうございます!

って、言いたくて」

一番に、という言葉は照れというか混乱というかよく分からない気持ちで押しつぶされて小さくなって細く出た。聞こえなかったかもしれない。

「お誕生日にご実家戻られてはるやなんて、お仕事なんは分かっとるんですけどめっちゃ嬉しくて、どうしても直接お祝いしとうて、その」

えーとえーと、どうやって会話を繋げよう、おめでとうございますって言ったあとどうするか何も考えてへんかったー!

「…あー、そうか、俺今日誕生日か」

しばらく黙っていると思ったらそんなことを考えていたなんて。
お忙しい彼らしい。

「ほんでお前はわざわざそれ言いにきてくれたんか」

「はい…ごめんなさい」

「なんでやねん謝んなや、ありがとうな」

ぽん、と頭を撫でられて安心する。
大きな手は同い年の廉兄より大きくて、…かっこいい。
初恋は叶わないなんていうけど、まだ分からないよね。




私の初恋はまだ終わってないよね。



片想いな志摩の末っ子。
たいしたことなくてすみません。
坊はぴば!


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bkm
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