「…」

さて。

着いてすぐ、私は小さな鳥を模した使い魔であるシュカを雀に混じらせて、外の様子を見にいかせた。
そこから察するには、先程入学式が終わり解散したところらしい。

そろそろ祓魔師志願者がこの部屋に来る頃だ。

シュラさんは一番後ろの真ん中の席に座り静かにしている…ように見えるけど、多分机のしたで携帯ゲーム機で遊んでる。

「(これからしばらくシュラさんと話せないのか…)」

近くにいるのに話せないというのはいささか辛いものがある。仕事なんだからどうも出来ないのだが。

私はガラクタを詰め込んだような段ボール箱の中を覗いていた。というより、段ボール箱の中の瓶の表面に写る自分の姿を見ていた。
変装とは不思議なものだ。
いつも胸のあたりまで伸びている赤茶色の髪を片方に纏めて結っている自分が、ウィッグによって背中の真ん中辺りまで伸びた紺色のストレート、前髪は右に向かって流している。
目も髪と同じ紺色。まるで別人だ。
これなら雪男も気づくまい。

すると後ろの扉が開いて、三人組の男の子が入って来た。

「あ!」

私はさも嬉しそうに声を上げた。もともと社交的な性格だから、初対面の相手に友好的に接するのはお手の物だ。
実際、塾生が来るのかも少し危ぶんでいたので、人が来た事は嬉しかったに違いないのだけれど。

入って来た三人組は随分と個々性溢れる風貌をしていた。
一番目立つ図体の大きな男の子はおでこの辺りだけ髪を染めて、なんというか、ニワトリを彷彿とさせる。一丁前に髭も生やしているせいか、おじさんがコスプレしてるみたいだ。実際コスプレしてるのは私の方だけど。
あとの2人は小さくて大豆みたいな男の子と、ちょっぴり遊んでそうな今時の男の子。
ニワトリ君のお付きの人みたいに見えるけど実際どうなんだろう。
ううむ、不思議な取り合わせだ。

「あぁ良かった、私教室間違えちゃったかと思いました、全然人が来ないんだもの」

「合うてますよ、祓魔塾やろ?」

ちょっとピンクっぽい髪の今時ボーイくんは友好的に声をかけてくれた。
豆太くんは話してはくれないもののこちらに向かってはじめまして、というような視線を向けている。
問題はこの必要以上にガン垂れてくるニワトリだ。先輩に向かってなんて悪い態度なの…!いやここでは同級生だけど…

「私、あなた達と同じ、新しく塾生になる椎橋ナジカです。どうぞよろしく」

「俺は志摩廉造」

「僕は三輪子猫丸です!

ほら坊、挨拶しなきゃ」

「…勝呂だ」

見た目から発せられるオーラとぴったり同調した低く不機嫌そうな声に、茜はハハ…と苦笑した。

志摩廉造。聞いた事のある響きに茜は人知れず反応した。弟がいるとは聞いていたがこのような形で関わるとは…。

「にしても随分大人っぽいんやね、なんかお姉さん相手にしてるみたい」

もちろん無自覚であるのは分かっているが、鋭い志摩の発言に、茜は内心で慌てた。

「大人っぽいとかはたまに言われるかな、でも全然そんなことないのよ」

「髪も肌も綺麗で、こんな美人さんに会えるんやったらわざわざ揃って京都から来た甲斐あったわー」

へら、と笑う志摩くんに、彼がプレイボーイであると確信する。
ここの兄弟は本当に仏門の人間なのか。
適当に否そうとするが、面識0ならば反応しておくべきワードが飛び出した。

「そ、そんなこと…って、志摩くんって京都から来たの?」

「志摩さんだけやのうて僕も坊も京都出身なんです。ここの塾通うためにこっちまで来たんですよ」

茜の質問には子猫丸が口を開いた。

「坊…って、勝呂くんのこと?」

恐らく初対面の相手なら誰でも言うであろう言葉に、勝呂は茜を見下ろして一言、

「悪いか」

「いえいえとんでもない!(なんでこんなに当たり悪いのー!!)」

心の中で泣き叫びつつ、どう仲良くなろうかと考えていると、また扉が開いた。


次に入って来たのは女の子の二人組だ。


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