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次の日は明蛇の総会らしく、午前から少し雰囲気が違っていた。

そんなことより私は
丸一日出張所で警備をしている間に計8回、男性に浮ついた内容の話題を振られ、否すのに正直とても疲れた。

金造の性格上、付き合っていることを隠す必要はおそらく皆無なので、断り文句に困りはしなかったが。

「彼氏おるん?」

「いますよ」

「せやかて今彼氏東京やろ?こっちでちょっと遊ぶくらいかまへんのちゃうん?」

「私の恋人はご存知志摩の四男坊です。心底惚れ込んでますので東京でも京都でもどこでも、浮気の予定はありませんわ」

困らなかった断り文句より抜粋。


さて、今日一日でいったい此処にいる何割の人に私と金造の関係が知れ渡ったことだろうか。

東京の人間だから時期が来たら否応なく離れる事になるし、後腐れなく関係が持てるとでも思ったか、ざまあみさらせ。

見るからにグラマラス美人のシュラさんを口説かずに引っ付いてた私に来るあたりで妥協した感丸出しなのよ!私だって脱いだら凄いんだからね!なめんな!はんっ


…なんてことを考えつつ表は完全無表情。
スタスタと歩いては自慢の軽い身のこなしで不定期的に煙の上がる屋根へと上った。



「精が出ますね、シュラさんに燐」

「おう、茜」

屋根の上に寝っころがるシュラさんと、汗まみれの燐。

「お疲れ様です二人とも。…燐はまだまだみたいですね」

「どーーーしても蝋燭全部が燃えるんだよ!クッソー」

頭をガシガシと掻く燐に、シュラさんが一向に助け舟を出していないことが見て取れた。一連の感覚を自分で掴めということだろう。

「炎の使い過ぎか焦り過ぎか知らないけど、随分汗かいてるわよ?」

「もうやめるか?」

欠伸混じりのシュラさんの声に反発して燐は人差し指を立てた。

「やめねーよ!!!
…あれだ、Tシャツ汗だくだから替えてくるだけだ!!

つーかちゃんと師匠の仕事しろ!
サボってんじゃねー!」

それだけ言い残すと、燐は屋根を飛び降りた。



「うーん、出力は良いみたいですけどね」

どろどろに溶けた蝋燭を手に取って呟いた。

「良すぎるんだよ、コントロールのコの字もできちゃいねえ、出しゃいいとでも思ってんのか」

やれやれ、と言った話し方でごろりと仰向けになった。

「必要以上のアドバイスはしない方針なんでしょう?私に剣を教えてくれた時と一緒」

となりに膝を抱えて座ると、シュラさんは身体をこちらに向けて頭を腕で支えて上げた。

「そだっけ?お前見かけによらずじゃじゃ馬だったから怒鳴った覚えしかねえわ
丸くなったもんだなあ」

「あなたの部下してたら丸くならざるを得なかったんですよ」

少し睨みを効かせてシュラさんを見ると、本人は大きく笑った。

「にゃっはっは!それでも無茶するとこは相変わらずだよなあ。
ったく、身体は資本だぞ。あんま酷使すんな」

サラリと言ってのけた言葉の中に林間合宿での一件を含んだのに気づき、彼女が自分のこと以上に私を気遣ってくれていることが身に染みた。

丁度会話が途切れたその時、燐が屋根に上がって来た。

「あれ?燐…」

「Tシャツは?」

降りて行った時とTシャツが変わっていないことをシュラさんと同時に指摘した。
戻ってきた燐の表情は先程と違い随分と焦りに満ちていた。


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