「是非!!我がチアリーディング部に!」
「何言ってんのよあんた!椎橋さんはダンスが好きなんだからダンス部に入るべきよ!!」
「あー…その、部活動は、ちょっと…」
お昼休み、わざわざ三年の先輩が私の元にやってきた。
現役時代はたまに試合の助っ人で弓道部に出入りはしていた。その程度なら今回も機会があれば、と思っていたが、ダンスとなると団体プレイ。助っ人のような感覚で片足を突っ込めるようなものじゃない。それに今回は学園生活を送りに来てるんじゃない。仕事をしに来てるんだ。
尚更部活動はすべきじゃない。
「椎橋さん」
やっと昼休み終了の予鈴がなり、先輩達は渋々戻って行った。
声をかけてきたのはクラスの男の子だ。
「なに?」
「大変そうだね、部活の勧誘」
「あー…大変っていうか、ちょっと申し訳ないなって思うかな」
「申し訳ないってことは部活しないの?」
「うん、私祓魔塾通ってるから、そっちが結構忙しくて」
「エクソシストんなるの!?かっこいーね!
ってかアドレス教えてくんない?俺椎橋さんと仲良くなりたいと思ってたんだよね」
にっこりと万人受けしそうな笑顔を貼り付けて携帯をちらつかせる少年。
まぁアドレスくらいなら良いか。見た感じチャラそうだし、どの女子にもこんな感じで連絡先を交換してるんだろう。下手に断ったり先延ばしにした方がアブノーマルな印象を与えてしまう。普通に普通に。
「いいよ」
女の子とは特に抵抗なくアドレスも交換しているし、出雲と朴はもちろん、燐や廉造くんとも既に交換済み。
深く考えずに埋まっていくアドレス帳をただ受け入れていればいいだろう。
「モテてんなーお前」
「あら、羨ましい?」
燐がクラスに私が居ることを知ってから、学校が終わると一緒に塾に行くようになった。
「べ、別に男にモテても…」
「はいはい、」
にこやかに流すと、俺だっていつかモテ期があーだこーだと言い出した。
「燐のモテ期より、私は杜山さんのパシリの方が気になるわ」
「あー、あれな…お前神木と友達なんだからなんか言ってやれよ」
燐の意見はもっともだ。近しい人間がなんとか手助けをするべき。
「私もそう思うけど、一番のネックは杜山さんが拒む所作を少しも見せない所なのよね。
あれだけの扱い受けてるんだから心の何処かで本当に友達なのかっていう疑心みたいなものは生まれてるはずなのに」
「んなこと言って、明日から合宿だぞ?ああ言うの見ててイライラすんだよな…」
ガシガシと頭をかく燐。心優しい悪魔だこと。
鞄のポーチから鍵を取り出して、適当な扉の鍵穴にさした。
「大丈夫よ、きっと時間と杜山さんの成長がなんとかしてくれるわ」
「なんじゃそら」
「杜山さん自身が頑張って大人にならなきゃ私達にはどうにもできないって話よ」
廊下に出ると、メロンパンとフルーツ牛乳を両手に持った杜山さんが、からころと音を立てて教室に入って行こうとしていた。