月曜日、新しく塾生が増えた。
「新しい塾生の杜山しえみさんです」
「よ…よろしくお願いします」
可愛い!!!!!!
和服とは、ずいぶん良い趣味をしてる…
杜山、って言ったか。
雰囲気から見ても、彼女は恐らく祓魔屋の娘さんだ。彼女本人と関わった事は片手で数えるほどしかないが、彼女の母親で現在の店主である彼女と、その母とは仕事上面識がある。
あの店と隣接する庭は見事なものだった。
奥村燐の隣に座った彼女は随分と緊張している様子だ。人見知りなのだろうか。
授業が始まってからは雪男にハートマークを飛ばしまくっていたが。
その日の塾が終わってからのこと。
「椎橋さーん!」
「あ、志摩くん」
「今日もお疲れさん」
「お疲れ様!今日はおひとり?」
「せやよ!椎橋ちゃんとお話ししたくて〜」
…うわぁ、だらしない顔。
「私に何か用だった?」
「いや、これといって重要なことはないねんけど、ほら、椎橋さんみたいに可愛らしい子には声かけずにはおられへんゆうか」
「志摩くんは人おだてるん好きやねえ」
へらへらと笑う志摩に過去の友人の面影が重なり笑みがこぼれた。
「あれ、関西弁?」
「え?」
「今なんか、関西弁みたいな喋り方せえへんかった?気のせいやろか」
「あ、私小さい時京都のおばあちゃんのところに住んでた事があったから、京都弁聞くとつられてたまに出ちゃうの」
5年前別れたっきりの祖母が頭に浮かぶ。あの人まだちゃんと生きてるだろうか。手紙は時折出すが、返事は来ないのだ。
「京都住んでたん!?うそ、どの辺!?」
「えっとね…」
それからは延々と地元の話に花が咲いた。
立ち話もなんだし、という事で噴水の階段に座り込んで。
彼の話術に乗せられて、志摩くん呼びから廉造くん呼びに変更にもなった。
女たらし恐るべし。
すっかり日も暮れた頃になって別れてから、あることに気づく。
「私、廉造くんと話してたのに、ずっと金造のこと考えてたな…」
彼に申し訳ないという気持ちもあったが、ここまで金造のことを考えるとは…というある種の感心のような気持ちが生まれる。やはり兄弟、よく似てるからなのだろうか。
「そいや双子の奥村兄弟よりは金造と廉造くんの方がなんか似てる気がするわ」
こんなことを言っているのを瀬々良に聞かれたら笑われるな。
瀬々良は散々学園時代に私と金造をからかっていたから。
ちゃっかり廉造くんからアドレスもゲットされて、
なんだか本当に学園時代に戻ったような気がした。
「(でも残念ながら私は廉造くんよりはあいつなんだよなぁ、なーんて)」