8
君はサンシャイン 8

時は流れ、季節が巡り。

一度は離れた縁下たちが帰ってきて、そして旭さんと夕が、処分という形でバレー部を離れた。

そのまま、四月になる。
春が来る。

私は、2年生になった。

「入学式でライブやるんです!楽しみ〜」

「へー、入学式ライブってことは在校生は見れねえのかな」

「どうなんでしょう…でも野外なんで、もしかしたら見れるかもですよ?グラウンドにカーペット敷いて簡単なステージにするらしいです」

いつの間にか部内での私達の関係はすっかりばれていて、部活帰りのふたりでの下校は恒例となっていた。
最初こそ冷やかしの声がうるさかったが、最近はそれもなく、温かく見守ってくれているような感じだ。それはそれでまたくすぐったいけれど。


この一年でRavenは随分と成長した。時折東京の小さなスクールアイドルイベントに招待される知名度となっており、私も街で声をかけられることが増えたりと、いろんな変化があった。Raven結成の本来の目的であった入学希望者数増幅は無事に効果が発揮され、今年は昨年の入学希望者を大きく上回ることとなっていた。

ネットでのスクールアイドル特集サイトでも、時折名前が上がっているそうだ。

「いよいよひかりも先輩かー、どんな一年入ってくるかな」

「可愛いマネージャーも入ってくるといいなあ」

「俺はひかりだけで十分だけどなー」

「もう、孝支先輩は私のこと喜ばせてどうしたいんですか?」

「はは、キスでもしてもらおうかなー」

そう言ってまた私をからかう。

仕返し、とばかりに腕を引っ張り、彼の白い頬に唇を軽く押し当ててみた。軽いリップ音と共に唇を離すと、孝支先輩はみるみる顔を赤くした。

「うーん、私も孝支先輩がいれば十分かもなあー?」

気を良くした私はそんな口を叩いた。

「ったく、去年の今頃は初々しく菅原さん〜って寄ってきてくれてたのに」

「なっ…!こ、孝支先輩だって去年は…」

そこまで言って言葉につまる。

「去年は?」

促されてしまうが、負けを悟ってバツが悪くなった私は少しそっぽを向いて告げた。

「去年も今もかっこいい…」

「……あーくそ、負け!俺の負けだー!」

なんの勝ち負けかなんてもはや二人とも分からないけれど、孝支先輩は大股で前をずんずん歩いて行った。
そんな彼をみてあははっと声をあげて笑う。二人を包む空気は優しくて、甘い。








堅苦しい式を終えた新入生が、説明もなくグラウンドに招かれた。真っ赤な絨毯の敷かれた場所の前にぞろぞろと新入生が集まっていく。

絨毯のバックにはめいがデザインしたRavenのロゴが刻まれた垂れ幕。

それを見た新入生達は突如騒ぎ出す。Ravenのライブじゃないか、あのRavenに会えるのか、と。

ああ、大きくなったんだなあ、Ravenは。

垂れ幕の後ろではスタンバイする私達。新入生達の歓声を聞いて思わずみんな口角を上げる。

学年が上がったことで、Ravenの間でも代替わりが行われた。弥生ちゃんから私に、リーダーの役職が移ったのだ。
私を除くメンバー四人、そして私達を集めて先月卒業した前生徒会長からの進言とあれば、逆らう理由はないとありがたく役職に就いた。

「新入生集合完了です!」

誘導スタッフの生徒にそうこえをかけられ、ありがとうございます、と頷く。
「私達を見て入ってきてくれた人達もきっといる。烏野に入ったこと、新入生に後悔させないように、最高のステージ!見せつけましょう!」

恒例となったステージ前の円陣で心を一つにし、私達は流れ出した前奏とともに絨毯のステージに上がった。

「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます!ようこそ烏野高校へ!」

野外とは思えない歓声のなか、客席のど真ん中一番前、目の前で呆然とこちらを見るオレンジ頭の小さな少年と目が合った。

ついこないだまで中学生でした、という感の拭えない少年に笑いかけ、小さくウインクをし、私はマイクに歌声を流し込んだ。





さあ、物語がうごきだす !


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