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リナリアンガール 1

リナリア…花言葉:この恋に気づいて




その日は本当に、大失態だったのだ。本来の私はこんなんじゃないのだ。

枕元に置かれたバレーボールが、私を責めているような気がしていたたまれなくなった。




昨日はちょうど、月末決算を終えたところだった。その月の調子がここ最近で一番良かったということで、上司のおごりで飲み会へと勤しんだ。男女比は五分五分で、職員への福利厚生がきちんとしたそこは、毎週土日は固定で休み、平日は9時から17時、残業は21時まで、という今時涙が出るほどホワイトな会社だった。ストレスフリーな職場は人間関係も悪くない。

そしてその日は金曜日。残業もほどほどに、18:30から職場近くの居酒屋に流れ込んだ。

久々の賑やかな酒の席に、私もすこしハメを外していた。少しのつもりだった。

元々酒癖は悪くない方、というか、酔っているのが顔に出ないタイプの私は、へろへろに可愛く蕩けている同僚女子を横目に、ぐびぐびと誰のほっぽり出したものかもわからない飲みかけのグラスを片っ端から片付けた。

そして意識は盲ろうとしているものの表情に出ない私は、誰に心配されるでもなく帰路に着いた。さすがにこれ以上飲むとヤバい、という危険信号だけは受信できていたので、二次会は辞退した。




地元の最寄り駅を降りて、10分ほど歩く。春も盛りの五月だが、夜の空気はまだ少し冷たい。私服勤務のためスーツではない私は、お気に入りのパンプスが鳴らす足音を聞いて鼻歌交じりだった。ああ、思い返せばもうこの時点で若干おかしい。

自宅は3階建てのこじんまりとしたハイツ。大きいとは言えないが、特別小さいわけでもない。アパートじゃなくてハイツなの、と何故か意固地になって実家の母に説明したことがあった。名前は「リナリアハイツ」。白塗りの壁に紺色の屋根と、ベランダの柵のアイアンが上部でくるりと曲げられた、なんだか可愛らしい装飾の"ハイツ"だ。新築ではないがまだできて3年目ということで、設備もそれなりに新しい。

私の部屋はその3階、エレベーターをでて左に曲がって、奥から三つ目。

ちゃんと3階で降りたことまでは覚えているのだ。しかし、部屋まで入った記憶がない。





次に目を覚ました時は、見知らぬ部屋の見知らぬベッドの上だった。


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