隣の奥村くん2
次の日、彼は遅刻することなく一限目から席についていた。

「おはよう若菜!」

「…おはよう」

なぜ昨日まで苗字呼びだったのにしたの名前で呼ばれているのかはよく分からないが、なんとなくスルーしておいた。


授業が始まってから最初のうちはそわそわと落ち着きの無い調子で椅子に座っていたが、途中から飽きたのか寝てしまった。それも大きないびき付きで。

「(いらっ…)」

先生も注意しようかどうしようか、と気にしている様子で、淀みなく進んでいた授業が途端に蛇行した。
この奥村のせいで。


さっさと先生が注意してくれれば良いのに、この学校の先生達は奥村に対してどこか遠慮しているように見える。
屋上へ行くことを頼んできた担任の先生も必死だったし。

しかしどんな理由があろうと、この煩わしいいびきは授業を邪魔しても良い理由にはならない。

私は仕方なく、プリントを束ねていたクリップで奥村の鼻を挟んだ。

「フガッ!?

ってぇな!なにすんだテメェ!」

「それはこっちの台詞よ。どんな態度で授業を受けてくれようと私には関係ないけど、うるさいいびきで周りに迷惑をかけるのはやめて頂戴」

「え、俺いびきかいてたか!?」

「ええ、思いっきり」

「そ…そうか、悪ぃな、若菜がそう言うならちゃんと静かに寝る」

「ありがとう」

それからすぐに授業が再開されたが、そのあとの休み時間ではどういうわけか、どうやってあの奥村を手懐けたのかと質問攻めに遭った。


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