木々で覆われた山の中。周囲に人気のないことを確認し、そっと右目を手で覆う。
ぐっ、と意識を集中させれば、瞼越しに 眼球が熱を帯びていくのを感じた。
(いち…、に…、さん…、し…、ご…)
不安を感じながらも、覆っていた手のひらをはなし、心の中でカウントを刻みはじめる。
視界はいたって良好。やや違和感はあるが他に異常はない。
30秒経過。こめかみがトクトクと、自覚できるほど脈を打ち始める。
1分…。眼球はさらに熱を増し、視界がわずかに歪む。
2分……。頭全体が、ズキズキとした痛みに支配される。
「っ!!」
3分に差し掛かろうとしたとき、あまりの痛みに意識が飛びそうになる。
……このあたりが限界か。
再び右目を覆い、視界を強制的にシャットアウトさせる。
(次は―……。)
しばらく経った頃、私はまた、右目に意識を集中させた。
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