他人なんて私が面白おかしく過ごせれば、どうでもいい
ああ、馬鹿馬鹿しい。
何が楽しくて官吏なんぞをやらなくてはいけないのか。そもそも、代々官吏の家系だからとはいえ、私が官吏になる必要は全く無い。
ならば何故官吏になったのか。
それは私が異世界人だからだ。しかも生まれ変わったら男でしたという具合。ほうら、答えはこんなに簡単に見つかるのに!
女から男になって、初めて分かったことがある。
この世界で男に生まれたのは非常に有利だった。今年、とある女の子が官吏になったが、正直苦労してるなぁくらいにしか思わない。だって私は男だし。
異世界人かつ生まれ変わったら性別がほにゃららだった私には、あの少女の苦労なんてこれっぽっちも分からない。だって私は順応性高いんだもの。
とりあえず私は前世の記憶を総動員して、女の子とウフフアハハと戯れ(前世が女だとか気にしちゃいけない)ながら、この世界の成り行きを見守っていこうと思う。
面白くなりそうだったら関わってもいい。
そう、だってここは彩雲国!





「艶冶ー」
私が呼ぶと、お色気むんむんに着物を肌蹴させた美女が「なあに、若様」と顔を見せた。
この艶冶(えんや)という妓女、その名の通り目茶苦茶な色気を持っている。そして私のお気に入りだ。
「若様って歳でも無いんだけどねぇ」
「やだ、若様はいつまで経っても若様よ。それより、どうしたんです? こんな早い時間に」
確かに、妓楼に来る時間帯にはまだ早い。顔馴染みだから艶冶と会わせて貰えるだけなのだ。
さっさと用事を済ませて帰らなければなるまい。
「ああ、今日でお別れだからね」
「お別れ? まぁ、ご結婚でも?」
「いや、茶州に行く。戻れるのは何時になるか分からないからね。」
「さ、茶州ですか……」
流石は艶冶だ。この閉鎖された花街に居て、茶州がどういう状況か分かっているとは。胡蝶に次ぐと言われるだけはある。
しかし面倒なことになったものだ。茶州に行くのはいい。あの少女を身近で見ていられるのだから。
だが、任命の仕方が悪かった。陛下はいきなり部所までやってきて、「新茶州州牧に付いていってはくれないか」とは。上司も驚いていたし、その噂は瞬く間に朝廷に拡がったから、厳格な官吏でありちょっぴり陛下に不満のある父親の耳にも入り、ぐちぐちと文句を言われた。
家を離れられるのもいい。遊び歩いても、文句は言われまい。
「若様に、戻ってくる気はあるのですか」
「あるよ。出来れば1年程で帰ってきたい」
「そう、ですか……」
艶冶はあからさまにホッとしていた。モテる男は辛いものだ。そもそも私がモテているのは、多大に前世が影響していると思う。
妓女は何かと大変だからなぁ。元女として優しくしてあげてたら、こんな状態だ。
放蕩息子の烙印まで捺されてしまった。仕事だってちゃんとやってるのになぁ。勿論、手を抜くところではとことん抜いてるけど。だってめんどい。
まぁ、いいんだけど。私は一生懸命働くより、親の脛をかじっている方が性に合っている。前世は軽く引きこもりかつニートだったしなぁ。
それに比べ、今の私って大分アクティブだよなぁ。
「早くいい人に身請けしてもらうんだよ。いいね?」
「若様は身請けして下さらないのね……」
「そりゃあ、出来るものならしたいよ。でも茶州は治安が悪い。荒れるだろうよ。分かるね?」
「若様……!」
「――もし、もし私が戻ってきても、艶冶はまだ一人なら」
その先は言わなかった。言えなかった。
艶冶が私の胸に飛び込んできたからだ。わぁお、きょぬー。こういう時は男って役得だよなぁ。
私はとりあえず、私の腕のなかに居る艶冶に口付けた。艶冶ぱねぇ、唇超ぷるぷる!
「やっぱり、私のことは忘れなさい」
「若様!」
うーん、元女の私が独り占めしちゃ悪いよなぁ。艶冶とはそれこそ10年近い付き合いだもんなぁ。
名残惜しいが、手放すか……。
艶冶って妹キャラみたいだし、せっかく友達として仲良くなったのに!
本当に惜しい。我が家に友人として招待するんじゃダメかなぁ。
「若様、艶冶は何年でも若様のことをお待ちしております……!」
「待たなくて、いいんだ。大切な人をいつ戻るかも分からないまま、待たせたくはない」
やっぱり艶冶、きみは親友だよ!
こんな良い友人を持って……私は噎び泣きそうだよ。感動させてくれるな、艶冶さんや。
これ以上一緒に居ると、どんどん離れがたくなるので、私は艶冶をそっと離し、とっとと帰ることにした。茶州へ行くための準備もあるしね。
艶冶は私のことを何度も呼んでいたけど、私は一度も振り返らなかった。
くそぅ、女の子を泣かせるとは……自分で自分を殴りたい気分だよ。痛いからやらないけど。女の子は泣かせないっていうのが私が花街に出入りするようになってからのポリシーだったんだがなぁ。
意外と早くに破ってしまったなぁ。
まぁ、いいや。艶冶のことはもう忘れよう。これから紅秀麗を思う存分観察出来ると思えば、友人の一人くらい――いや、勿論寂しいが、茶州でも友達の一人や二人作ってやるんだから!――どうでもいいと思えることだった。






他人なんて私が面白おかしく過ごせれば、どうでもいい
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一回やってみたかったネタ。こういうネタ好きなんかな……←
こういうのはジャンプ系とかの方が面白いのは重々承知だが、彩雲国でやりたかったんだ!
っていうかこれは――友情なのかな?
傍観には入らないよな。
関わる気満々だし。
恐らくくっつくとしたら、オリキャラである艶冶か、十三姫。
女には基本的に甘い。でも軽く引くときもある。そういうときは大抵(わー、昔の私もこんなことしていたんだろうか)とか(健気すぎて逆に恐ろしい……)とか思ってる。

どうでもいいけど、一回だけでいいから、本当に傍観してるだけの話が書きたい。ヒロイン?ノンノン。友達?まぁヒロインの友達の友達の友達くらいかな。っていう感じのやつ。


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