意外と楽しくなりそうだから、うふふ

「雲幽!」
私は私のモノだけど、私ではない名前を呼ばれて、へらへらと笑う。


ここは日本。省エネの昨今ですら朝から晩まで電球ぴかぴかの日本ではなく、血沸き肉踊るような日本である。要するに室町時代です。夜とか辺りが真っ暗で、本当に星が綺麗です。これは感動モノだよ。
私は雲幽。名字はない。雲幽というのは、養い親の和尚が付けてくれた名前だ。和尚は自分の名字を使ってもいいって言ってくれるけど、名字無くても困らないから名乗ったことはない。
十になるまでは勉強を教わったり、畑仕事したり、掃除したり、護身術習ってたりしたんだけど、ある日突然「もう教えることはない。自分で道を選びなさい」と言われ、たまたま前の日に落ちていたチラシで見た『忍術学園』に行きたいと行ってみた。学費は出してくれるらしいけど、「出世払いだな」って笑われた。
和尚は同時に、安堵したようだった。私が女のような言動行動をしてしまうのを、気にしていたらしい。まぁ、女だったんだけど。それが忍術学園っていういかにも男らしいところに行きたいって言いだしたから、やっと男らしくなってくれると安心したようだ。
別に私は男らしくなりたいから忍術学園に行くんじゃない。私はただオタクでミーハーなだけ。だってあの忍術学園があるんだから、ぜひ通ってうはうは楽しまないと! 別にキャラとの絡みはどうでもいいんだよ、むしろキャラ同士の絡みが見たいの!
そうして私は忍術学園に通うことになった。


「やぁ、伊作! 元気?」
「雲幽、どこに行ってたの。探したよ」
で、紆余曲折あり六年生。私はまぁ、当然の如くは組だった。だって勉強とかタルいし。まぁクラスメートとはそこそこ仲良くしつつ、人間関係とかめんどくさいので、極力接触は避けた。授業と食事以外は外にも出ない。休日は部屋でごろごろ、放課後も部屋でごろごろ。宿題? ノンノンそんなのはやりたい奴がやればいいのさ。
そんな感じで、は組の奴らとは仲良くしつつ、ごろごろだらだら気付けばもう六年生! 卒業したら和尚のところ戻って、小僧にでもなるかなとか思ってる。誰にも言ったことないけど。
は組の奴らとはある程度の友情は築けたと思うからこそ、言ったら反対されるだろうし、奴らは本気で忍者を目指しているのだから、一人だけ「いや、自分小僧希望なんで」とか言って空気を悪くしようとは思わない。かと言って、じゃあやめるのかと言われたら、これからが面白いところなのでそういう訳にはいかない。世の中上手くいかないなぁ。
「進路のことで先生が探してたよ」
「はいはい。ありがとね伊作。不運な君が私のところに辿り着けるなんて……大きくなったね」
廊下でばったり伊作に会うなんて。いや、ここは立花や潮江、バカの七松じゃないだけマシか。
っていうか、先生も伝言を頼むなら伊作に頼むなよ。コイツが不運なの有名だろ。落し穴には引っ掛かる、廁ではトイペがないことなんてしょっちゅうだし、もはや本とか書類とか薬草とかぶちまけるなんて日常茶飯事だ。
そんな伊作が私の元まで無事に辿り着けるなんて! 天変地異の前触れかもしれないな。経でも上げておこう。
「僕、雲幽のところに行くときは不運じゃないよ!」
「じゃあ伊作が凄いんじゃなくて、お守り代わりになってやってる私が凄いんだな」
「雲幽ありがとう!」
「おまえら相変わらずだな……」
背後から聞こえた声に留さん、と伊作が呼んだので振りまけば、留三郎が確かにいた。
相変わらずってどういう意味だいと思ったけど、深くは突っ込まなかった。そういえば、最近授業サボってたから、会うの久しぶりだ。しかも私一人部屋だし。
「雲幽は先生が呼んでたぞ。行かないと迎えに来るかも知れないな」
「そうだったそうだった。伊作が変なこと言うから」
「僕の所為!?」
そんなやりとりをして、私は先生の元に向かう。やだなぁ、しかも進路だし。いいじゃんか、何になろうと。
先生の長屋に着いて、長ったらしい口上を聞いて、さっさと進路決めろよーと脅された。ひどい。
というか、何件かお誘いが来てるらしい。授業来ないからって文句言われた。授業に行かなかったのは私のせいじゃなくて、お布団が誘うせい。そして眠気を誘う陽気のせい。
まぁ、お誘いは全部断るとして、なんとかのらりくらり躱そうそうしよう。そんなこと考えながら歩いていると、落し穴があった。
中からざっざっという音と共に、穴から土が出てくる。なるほど、これが噂の綾部くんかな? 私出無精だから落し穴とか落ちたこともなければ、見たこともない。今日この瞬間初めて見た。
へぇすごいなぁ、と周りをぐるぐるしてたら、ひょっこり顔を出した少年と目が合った。制服の色から見るに四年生か。彼の綾部くんも四年生だとか。この子が綾部くんだな!
「雲幽先輩ですか?」
「知ってるの?」
「はい。立花先輩から、よくうかがってます」
「立花? 私アイツと仲良くないから、悪口かな」
私が首を捻ると、綾部くん(仮)は「好かれてるんじゃないですか?」と言った。ええぇ、嫌われてるじゃなくて? だとしたら尚更訳がわからん。
「ふーん。ま、どうでもいいや。ところで君は綾部くん?」
「はい。知ってるんですか」
「伊作が、よく綾部くんが掘った穴に落ちると言っていたから」
そう言った途端、綾部くんは不機嫌そうな顔になった。なんか気を悪くするようなことでも言っただろうか。
「私のせいじゃないです」
「うん、伊作が不運な所為だよね。まぁ伊作ももうネタだしね」
「です」
「さて、と。私はそろそろ行くわ。綾部くんも夜はまだ寒いから、早く帰るんだよ」
私はうふふと笑った。






意外と楽しくなりそうだから、うふふ
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もし性転換主がrkrnに転生してたら、を妄想したらたぎったので


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