この時代ピアスの穴ってどうやって開けるんですか、もしかして錐かなんかでブスッとかはないよね?言っとくけど私Mじゃないから痛いの嫌だよ――友情?しゃらくせぇ。痛みを伴う友情なんてお呼びじゃな……ぎゃあああああ。

それは私がまだ新人だった頃の話だ。
私と同期の欧陽玉・楊修とは部署は違うものの、仲良くやっていた。
「ぎょくぅー」
「何ですか雲幽。と楊修」
「何ですかじゃないって。もうお昼だよ。昼飯食おうぜ!」
私が無理やり二人を引っ張っていたとも言える。二人とも良い所のお坊ちゃん(私も良いところのお坊ちゃんに入ってしまうのだけれど)だから、余り人と馴れ合う事に慣れていないらしい。そりゃあ、官吏には私みたいにホイホイ妓楼に通うヤツは余り居ない。体面もあるしね。
そんな孤立した二人を私はせめて人並みにしてやろうとだな――すみません、ちょっとアウェーにビビッて友達作ろうとしてました。だって可愛い女の子居ないし、むさ苦しいおっさんばっかりだし、なんか影でコソコソと話している男達をホモにしか見れない自分しね。近道だと思って変に人通りの少ないところに入ったらアッー!な現場に出くわしてしまう自分しね。やっぱりこういう囲まれた世界に居るとそういう世界に旅立ってしまう人が居るのね……。かの有名な新撰組ですら居たってくらいだしな。何かは前の文から察してくれ。
朝廷に入ってそうそうそういう世界の入り口に立たされそうになった私は、腐敗系女子の習性によって誰が攻めで誰が受けかを同期で考えたんだよ。で、ざっと周りの同期を見渡してみたところ、一番キラッキラしてる欧陽玉と地味だけど中々のイケメン楊修に目をつけた。あの二人物凄くおいしいぞ!とね。で、何故かこの関係になった。どうしてだ。
欧陽玉と楊修は二人でイチャコラしてていいんだぜ! 私が二人の架け橋となるなら喜んでなってやろうじゃないか! ああ、二人が並んで立っていると凄く絵になるよもぐもぐ!
「今日は私のお友達玉雪ちゃんがお弁当作ってくれたんだよ!」
「相変わらずですね。ちょっと、楊修。あなたも何か言ったらどうです」
「……うまいな」
そういうことじゃありませんといきり立った欧陽玉を私と楊修は無視する。そして疲れた欧陽玉は何も言わずにもくもくとご飯を食べる。それが日常になり始めた。


事件は起こった。雨の日のことだ。その日は直で帰宅してのんびりまったりとしていると、家人から来客の知らせが来た。おいおい誰だよこんな夜分に。しかも今夜は雨の所為か物凄く冷えている。クレイジーだぜ。そう思いながら部屋に通すようにいうと、家人は困ったように眉を下げて「お客人は雨で濡れておりまして――」とか言うものだから、とりあえず風呂に通すように告げた。ますますクレイジーな奴だ。しかしそんなクレイジーな知り合いが居たかな。
考える事四半刻、クレイジーは姿を現した。
「……雲幽」
「玉、どうした?」
クレイジーは欧陽玉だった。身体からはホカホカと湯気が出ているが、その表情は暗い。おいおい、何があったんだ?
とりあえず黙ったままの欧陽玉に座るように勧める。座ったのを確認して、酒も勧める。
「言いたくなければ言わなくてもいいんだぜ兄弟。言いたくないことは酒でも飲んで忘れちゃいなよ」
「――そんなことしたらここの家の酒が全てなくなりますよ」
「ああ、お前はザルっていうかもう底抜けの樽みたいな飲みっぷりだったな……」
それは困ると肩を竦めてみれば、欧陽玉は気が抜けたのか泣き始めた。おいおい、本気でクレイジーだ。
言いたくないんだったら言わなくてもいいけど、目の前であの欧陽玉が泣いてると流石に原因が知りたいんだけどな! っていうか、お前私のところじゃなくて楊修のところに行けよ。空気嫁。それで楊修の胸に飛び込んでアッー!な展開に持ち込めよ。私が楽しい。
いや、むしろこれはアレか? 楊修には情けないところは見せたくないとか言う――ないな。ないない。だってあの欧陽玉だぜ。情けないところ見せる云々の前に、一人で抱え込んで居そうだ。あれ、じゃあなんで私のところに来たんだお前。
「故郷を出るときに本家の方から頂いた硯が割れていたんです」
「高いのか?」
「かなり貴重な石を使ってます」
「お前、相当恨まれてんな」
確かにこれは流石の欧陽玉とはいえ泣くかも知れない。だって欧陽玉は自分の一族大好きだし。欧陽家はましてや彩七家である碧家の分家筋。自分の主とも言える人から貰った硯を割られたりしたら、欧陽玉の忠誠心が許さないだろう。きっと何たる屈辱とか思っているに違いない。
しかし、そんな高級な硯を割った奴は凄いな。私なんか前世の記憶の所為か割と貧乏性だから、高級な硯なんて割れねぇよ。いや、今生は生まれた家が裕福だから、割と豪遊したりしてたけど、流石に高級な硯は割れねぇって。
「私の何が悪いって言うんですか。駄目だと思ったからそう言っていただけなのに」
「お前はもうちょっと世渡り上手になれ。まあ、今回は割られたもんは戻らないし、諦めろ。いいか、言いたいことはよく考えてから発言しろよ。相手がどう受け取るのか考えろ。その上で俺はどうしても言いたいんだと思ったなら言えばいいさ。ただ、言葉はしまったと思っても回収出来るわけじゃないし、責任は全部自分に降りかかってくるんだぜ」
「雲幽は慰めてくれないんですか」
「やなこった。自業自得だろ」
私は欧陽玉を鼻で笑ってやる。何でテメェの因果応報の慰めを私がやらなきゃいけないんだよ。しかも慰めたら最後まで責任持てとか変な希望持たせるなとか言われそうだし。欧陽玉めんどくせぇ。
でもまぁこうして諭してやってんじゃんかよ。それで我慢しろや。
「雲幽は私の大事なものを奪わないですよね」
「玉から何も奪うつもりはないよ」
「じゃあ約束してください。私より先に死なないと」
「はいはい。お前の死を看取ってから死んでやんよ」
なんなの欧陽玉。めんどくせぇえええぇ。はらはらと涙流しちゃって! そういうのは楊修にやれよな!
私って元女だから男も好きだけど、今が男である以上男は恋愛対象にならないんだぜJK。身体は男だけど元は女だから、女も恋愛対象にはならないけど。私もう独身貴族満喫してやるんだぜ。10代なのにとか言わないでよ。魂的にはもう10代なんてとうの昔に過ぎ去ったんだよ。
私に泣き落としとか上目遣いとか効かないからー。私自身殺しても死にそうにはないけれど、欧陽玉よりは先に死んでやろう。で死後思いっきり笑ってやるんだぜ。
「絶対ですよ!」
「はいはい。私だけってのも癪だから修にも同じ約束取り付けて来い。そしたら絶対の保証してやるよ」
「絶対ですからね!」
どうやらすっかり元の調子に戻りかけているようで、眉を逆さのハの字にして酒を瓶ごとあおった欧陽玉に私は笑いをこらえた。なんて単純な奴なんだ、欧陽玉。単純な奴ほどめんどくさいって本当だな。

後日、欧陽玉がデザインした色違いのピアスが贈られて来た。私、欧陽玉、楊修をイメージしたピアスをそれぞれ用意し、私には欧陽玉と楊修をイメージしたピアスを片耳ずつ、欧陽玉には私と楊修のが片耳ずつ、楊修には私と欧陽玉のが片耳ずつ贈られた。
欧陽玉からは肌身離さず、どんな窮地に陥っても外すなとのお達しでした。




こうして友情が育まれるわけである
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玉が碧州に行く前に外すも肌身離さずお守りとかに入れてたら可愛い。


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