これはもう諦めの境地に近い

ちょ、おまわらわら!
気付いたら異国でしたってどういうことだよ馬鹿野郎。
「――――――」
「―――」
何言ってるかさっぱり判らん。幼少時の記憶が甦ってくるぜ。
私――喬雲幽は不幸なことにも転生トリップをしてしまい(玩具のおまけと一緒にしたくはないが、おまけに記憶付き)、しかも生まれてみれば性別がホニャララ。元女(現在は男)の私が、飛ばされた異世界で更に異世界に飛ばされるという、何ソレどんなネタですかわらわらとでも言うかのような体験をしました。
そういうフラグらしきものは無かったから油断してたな。
取りあえず言葉は判らない、現在地も判らない状態なので、じっとしていようと思う。迷子になったら無闇やたらに歩き回らないこと。これ常識。
どうやら中国っぽいし、もしかしたら言葉が判らないだけで、文字なら読めるかもしれない。
何せ元居た世界は中華風ファンタジーの世界だからなぁ。異能? なにそれおいしいの、だった私だが、元居た世界は無駄に長生きしている仙人が8人も居る世界で、思い返してみればなんか訳の判らない人たちに囲まれてばっかりだったからな。
街の人たちの声に耳をすませていると、何か段々判るようになってきたかもしれない。うん、ごちゃごちゃ色んな人の声が混じって聞き取りにくいけど、よくよく聞けば判らなくもない。
前世は引きこもりだったが、元居た世界では赤ん坊からやり直したし、なんと言ってもその世界は中華風。中華じゃない。中華風。前の世界で一から言葉を習得した私を舐めるなよ!
言葉には難儀しなさそうだと言うことが分かったので、とりあえずここが何処だか聞かないと。
やっぱり女の子の方が話し掛けやすいよね、だって私は元女!
「あの……」
「はい?」
「ここはどこですか?」
私が話し掛けた女の子は首を傾げた。
ごめん女の子! 自分でも変な質問しているってことは分かっているんだサーセン!
「ここは拓峰よ」
「拓峰?」
何処だよ拓峰。いや、これは異世界に来てしまったんだからしょうがない。
一々不思議がって居たら身が持たないぞ。
「地図とかある?」
「地図……私が泊まっている所にはあると思うわ。来て」
「ありがとう」
「気にしないで。困っているんでしょう? 私もこちらの人たちには助けてもらったから」
こちらの人々?
うわ、もしかしてこの子も異世界から飛ばされたとか? 私と同じ境遇なんかね?
あっちよ、と女の子は言うので着いていく。気になるしね。
「そういえば、君の名前は?」
「私は大木鈴って言うの」
「私は雲幽。喬雲幽だよ」
大木鈴か……。ん、大木? ってことはもしかして日本人なのかな。
それにしても何か聞き覚えがあるような……。
「大木さんって呼んだ方がいい?」
「鈴で構わないわ。皆そう呼ぶもの。あそこよ」
鈴が泊まっているというところは何だか寂れたところだった。緑の柱が目立つ。
此処は一体どういう所なのだろう。
鈴は食堂のようなところで待っていてくれと言うので、とりあえず手近な椅子に座って鈴を待つ。
ここは一体どういう場所なのだろうか。
今までの経験からしたら、中国風と言われて思いつくのが今まで過ごした彩雲の国か十二しか国が無いあの世界だが、たしかその世界の慶という国に鈴という少女が居たような気がする。
長い年月を経て所々忘れてしまっているが、物語の大筋はまだ覚えている。日本で育った少女が知らない世界知らない国で女王になる話だ。
――マジでか。
「あったわよ、地図」
「あ、ありがとう」
鈴が持ってきた地図はやっぱり見覚えが――マジでか。
食堂の奥からやってきた十四五の少年が地図を指差して「ここが拓峰だよ」という。
「国は?」
「慶。和州止水郷拓峰」
「慶、か……」
「どうかしたの? 雲幽、顔色悪いわよ」
どうしたもこうしたもない。やはりここは異世界だったか。もしかしたらどっか知らない土地かもなんて淡い期待を抱いてた数分前の自分、馬鹿みたいだ。
「私、実は山客なんだ」






これはもう諦めの境地に近い
―――――――――――――――
この主人公は彩雲国では官吏だったので、恐らく慶でも官吏やります。
礼部だったから、大宗伯か太宰か……。


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