碧州に行くのはいいけど、死んだ場合って労災効くのかね?
あのあと見事礼部への復帰を果たした私ですが、ここのところ家に帰ってません。
何故かってそりゃあ、楊修が吏部侍郎に昇進したからですわーい。どんどんぱふぱふ。
紅黎深が更迭されて出仕しなくなった紅家をばっさばっさと切っていた楊修にマジでびびりました。楊修の紅黎深への恨み半端ない。
私も昇進させられそうになったんだけど、楊修に頼み込んで土下座したら何か上機嫌になって許してくれた。変な奴。
そういう訳で、未だに魯尚書と一緒に仕事をしている私なんだな。
ちなみに昇進しない条件として、楊修の家に泊まるっていうのがあってだな、それで私は一週間以上家に帰ってないんだな。
楊修、そんなに私のことが好きだったのか。わらわら。
欧陽玉も私のこと好きすぎるだろとか思ったけど、楊修もそうだったらしい。やっぱり友人が欧陽玉だからかな。
欧陽玉と楊修はどちらかの家に泊まるともう一方がうちにも泊まれ的な手紙を送ってくるんだ。それが煩わしくなると、私は帰宅する。
今回も早々に欧陽玉から手紙が来て、文句は楊修に言えと返したら楊修の家に乗り込んできました。なんか引っ越しみたいな大荷物だった。
ってな訳で、私と楊修と欧陽玉は3人で寝てます。なう。やましいことなんて一切ないんだが、正直私を挟んで寝るとかどんだけおまえら私のこと好きなんだよ。
楊修、私、欧陽玉の三十路男三人(しかも全員独身)の川の字なんて暑苦しいだけだ。地味に私の寝巻を掴んでるのもいただけない。そういうのは女の子がやるから可愛いんだ。まぁ二人とも顔がいいから許すがな。
本当に腕枕強要されたらどうしようかと思ったが、朝ご飯作れって言われた方が戸惑うことが分かった。貴族の家では料理なんて使用人が作ってくれるだろと言ったけど、どうしても私の手料理が食べたいらしい。
このワガママコンビめ!
っていうか足を絡ませてくるな。おまえら実は起きてるだろ。だって二人で寝るときは思いっきり蹴ってくるだろー!
女の子がやる分にはうほっ!ってなるが、三十路の男にやられても全然嬉しくないよ!むしろ気持ち悪いよ!





なんてことがあったなぁ、と思っていたら、私超睨まれたピーンチ。誰にって欧陽玉にです。
「それと、礼部の喬雲幽を連れていきます」
有無を言わせない雰囲気に、ついつい私もいいよーと言ってしまいそうになるが、そんな軽い返事で片付けていいものじゃない。
私がおい、待てよ!と某タレント風に声をあげようとしたら、それよりも早く異議ありを申し出た奴がいた。
そう、楊修だ。
「今、雲幽に死なれては困る。吏部に引き込む予定だからな」
「ええ、ちょっと待ってよ二人とも。言いたいことはいっぱいあるんだよ。まずは楊修――お前昇進させないって約束しただろーが! どういうことだ手前ぇ! 私が面倒なこと嫌いなの知っているだろ! っていうか死ぬ前提とか何なのお前」
「官位を落として吏部に来れば昇進してないから問題はないだろう」
すみません、吏部って労災効きますか?
マジで楊修手前ぇええぇええぇ!
欧陽玉も「だったら吏部ではなく工部に来なさい。楊修に取られるのは癪です」って何だ、何なんだ!
あああああ、マジで父親に目を付けられた予感。せっかく上手く誤魔化してたのに。兄さんなんとかしてくれ!
助けて!とアイコンタクトすると、諦めろとアイコンタクトされた。
あああああ、マジで兄さん小心者。蚊一匹殺せない兄さんに頼もうとしたのがバカだった!
「私には雲幽の補佐が必要なんです!」
「ふん、ただ雲幽と一緒に居たいだけだろ」
「もちろんです。しかし雲幽がそこら辺にごろごろ転がっている下っぱ官吏より群を抜いて優れているのだから仕方ないでしょう!」
欧陽玉手前ぇええぇええぇ!
言い切るんじゃねぇよ!
何なのこいつらマジで私のこと好きすぎるでしょ。
え、何、私とおホモ達になりたいの?
馬鹿野郎、そんなの二人でやってろ。私を巻き込むんじゃない。現に周りの皆が「ホモ? え、ホモなの?」とか言ってるんだよ!
どうしてくれるんだ。
「玉、修。おまえら一回黙れ。――いいか、私たちはあくまで友人だ。清々しいまでに友人だ。互いの家を行き来したりしているが、それは友人だからだ」
「確かに私たちは友人です」
「他に何がある」
……この二人ってこういう性格だったっけ、と思った私はおかしくないはずだ。
二人の(友人としての)愛情がとてつもなく重いです。きっと4気圧ぐらいある。一人4気圧だ。そんな重い愛に耐えている私って超良い奴。
「だが、政治に友情はいらない。そうだろう?」
「確かにそうは思いますが、緊急事態ですから、ぺーぺーよりは熟年夫婦のようにつーかーで通じる雲幽の方が便利です。そもそも、あなたは自分が楽したいだけでしょう」
「私もそう思うな」
自分が楽したい?
当然だろ!
前世ニートの私を舐めるなよ!
趣味で始めた株で大儲けした私を舐めるなよ!
「何で私が責められなきゃいけないんだ。私は親父殿がしつこいから官吏になっただけなのに。こうなったら官吏なんて辞めてやる」
「却下します」
「却下」
ねぇ、人権って言葉は彩雲国にあるの?ないよね、これは絶対にないよね?
法の精神とかないの?
「まあまあ、喬官吏。民を助ける為だと思って」
「魯尚書がそういうなら……」
しょうがないか。
だってナイスミドルの魯尚書に頼まれたら断れないよ。私、前世でおっさん大好きだったし。
欧陽玉と楊修がぶうぶう五月蝿いが、この際華麗に無視だ。
「ようやく決まったか」
孫陵王はにやにやしている。
碧州で縹家に会うことがあったら、一番始めに孫陵王を呪ってもらおう。だってなんかむかつく。年齢的にはドストライクだが、それとこれとは別問題だ。
結局、欧陽玉の補佐として碧州に行くことは決まってしまった。ここ数年の私って超落ち着きない。
しかも茶州の次は碧州ですか。何で私ってこうも話題の州に行かなくてはならないのだろう。
人生って不平等だ。
「雲幽、良かったですね。これで私と一緒に居ることができますよ」
「ちょ、マジであらぬ噂が立つからやめて!」
だんだん欧陽玉が手に負えなくなってきました。
そして段々と楊修も手に負えなくなってくるのだろうか……嫌だな。
面倒になったら逃げよう。国とか家族とかぶっちゃけ私には関係ないし。





碧州に行くのはいいけど、死んだ場合って労災効くのかね?
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無理矢理詰め込んだ感満載


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