鬼畜じゃないよドSだよ

現在冗官の私。
いやあ、仕事がないっていいね。もう日がな一日ごろごろ出来るって素晴らしい万歳。まぁ普通なら喜んでいる場合じゃないんだがな。正直元々ニートの私が、問題起こした上司と一緒くたに冗官にされたくらいではへこまないよ(というか私は何もしていない)。むしろ嬉しいくらいだ。だってこれって人員削減やっちゃうぜでも可哀相だから救済もしてやんよ!の奴だろ。
ちなみに現在の私は、楊修の膝枕で本読んでる。膝枕強要したらやってくれた。優しいな楊修。でも内心腸煮え繰り返っていそう。っていうか膝枕はやっぱり女の子の方が寝心地がいいってことが分かった。なんか堅い。
それにしても巧くやってるよね楊修。私は友人だから友人だから友人だから(大事なことなので3回言ってみた)すぐに気付いたが、確かにこれだけ変わっていれば気付かない奴も多そうである。
思ったんだが、私の友人って無駄にキラキラしてて自己主張の激しいのと無駄に埋没しちゃう割と地味なのしかいない。両極端キター。
「あーやばい。眠くなってきた」
「寝たらどうですかー?」
「やだ。だって女の子の膝枕じゃないと堅くて寝れないよ」
あ、一瞬だけ笑顔が引きつった。ウケるわ。お前が膝枕をしろって言ったんだろという楊修の心の声が聞こえてくるようだ。
にやにやと笑って「冗談だよ」と言うと、やりとりを見ていたのか紅秀麗が「楊修さんの邪魔してないで、仕事を見つけてきてくださいよ」と言った。ちえ、折角寛いでいたのに。
「めんどい」
「めんどいって……。そんなこと言っていると辞めさせられちゃいますよ?」
「あー、なんか魯尚書が哀れんだ目で『どこにも行くところが無かったら礼部に来なさい』って言ってたからなんとかなるよ。それまで私はぐうたら過ごすんだ」
「ちゃんと仕事してください」
本を手放し、楊修の長い髪を弄りながら秀麗と会話する。何か楊修ってばすっごく嫌がってる。でもされるがままの楊修とか珍しいから、止めてやらない。
「ねぇ、秀麗さん。貴女はいいの?」
「よ、良くないですけど……今は私のことよりみんなを何とかしなくちゃ」
「ふーん」
あーかわゆい楊修。携帯かデジカメがあったらばしばし撮ってるのに。そして欧陽玉に見せびらかすのに。
なんか楊修が本気で『いい加減にしろよ』的な笑顔を向けてきたから、私は素直に楊修の膝から退くことにする。よいしょと身体を起こせば、ぎしぎしと変な音がしそうなくらい怠かった。こんな感覚何十年振りだろうか。
「私、ちょっと工部に行ってくるわ」
「工部ですか? あ、なら欧陽侍郎に言伝を――」
「それは私が言うべきことじゃない。感謝の気持ちを伝えたいなら、ちゃんと自分で欧陽侍郎に伺うべきだよ」
私はそう言って冗官たちの溜り場を出た。
正直、言伝なんてめんどくさくてやってられないだけである。というか私は興味のないことには鶏並みの記憶力だからな。三歩歩けば忘れてるわ。それに使いっ端とかやだかんな。
たらたらと工部までの道程を歩く。入れるかな、工部。今の私は官位ないしなぁ。ま、いざとなったら欧陽玉が何とかしてくれるだろ。友人だし、友人だし友人だし(大事なことなので3回言ってみた)。
「全く何やってるんですか」
「あれ、どうしたの?」
「どうせそろそろ楊修に怒られる頃だと思って迎えに来てあげたんです。あなたが仕事をするとは思えませんし、他に行くところもないでしょうから」
すげぇな、流石は欧陽玉だ。
っていうかアレだな。欧陽玉はツンデレだ。そしてこいつ私のこと好きすぎるだろ。普通はそんなん分からないよ。笑いのあの記号が4つくらい付きそうだ。
「あ、言っとくけど工部で働くつもりはないから。酒臭い」
「あの呑んべえがあなたを使うとは思ってません。仕事しないのが二人も居たら大迷惑ですから」
「酷ぇ! まぁその通りだがな」
なんなの欧陽玉って。私のストーカーなの? 私のこと理解しすぎだろ。
そして工部尚書の扱い酷い。ウケる。仲悪いとかそういうの以前の問題だろ。
「どうせ工部を休憩所がわりに使うんだったら、私の分の仕事もやってもらいますから」
「自分でやれ」
「出入り禁止にしますよ」
「職権濫用ー。いくら私の特技が筆跡の真似だからって酷くないですかー」
「あなたみたいな仕事の出来る人間をほったらかしにしておく方が酷いと思いますよ。私はただその資源を有用に使っているだけですが」
資源呼ばわりかい。そもそも仕事は出来て当たり前だと思うんだがな。そんな仕事の出来ない奴が朝廷に居るとは、世も末だな。
折角サボろうと思っていたのに、計画が台無しだ。仕事をしなくちゃいけないのなら、どこか他の場所に行こうか。しかし兄さんは仕事してるし、行ったらきっと新しい職場の面倒までみてくれるからダメだ。私はまだのんびりしたい。かといって父さんは――仕事には厳しいが身内には甘いので、これまた新しい仕事の面倒を見てくれるからダメだ。結局欧陽玉しか残っていないのか。
「まぁいいよ。それで玉の為になるんだったらやってあげる」
「――あなたは本当に馬鹿ですね。家族に対して『身内には甘い』と言うのと同様に、あなたも『身内には甘い』のですから」
「それはちゃんと玉のことを身内だと認めてるからだよ。もっと誇れ」
「誇るほどのことではないでしょう」
欧陽玉って本当にツンデレだな。何だかんだ言いつつも、内心では嬉しいくせに。照れてるんだな。
にやにやと笑うと欧陽玉は気に障ったのか、すたすたと一人で工部に戻ろうとしたので、私も付いていく。勿論にやにや笑いながら。
「照れるなよ」
「照れてません!」
「――玉、私は玉のこと好きだよ」
「やめてください。誤解されるでしょう!」
「でもさ、玉は寂しがりやだから何度も言ったほうが良いかなって」
「――!」
欧陽玉は顔を真っ赤にした。おお、照れてる照れてる。
あーもうクソ可愛いな。前世がニートで腐敗系女子だった私にはもう耐えられん。マジ俺の嫁。
私は基本的にSだから、もう気に入っている子(男限定)は特に虐めたいんだよね。女の子にはそんな酷いこと出来ないよ、うん。だって女の子は可愛い生きものじゃまいか!
欧陽玉マジ半端ない。おホモ達になったらどうしよう。個人的には楊修と欧陽玉がおホモ達の方がきたこれ!というかわくてか!というか。
「と、兎に角! 早く行きますよ仕事が溜まっているんですから!」
「えー、溜めたの工部尚書だろー。何で私がやらなきゃいけないんだよー」
しかしまぁ、欧陽玉が可愛いので許してやるか。






鬼畜じゃないよドSだよ
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次はぶっ飛ばして玉ちゃんが碧州州牧になるところかな!


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