3(学パロ)
好きだ。
否、違う。愛している。
それはどちらかというと、惚れるとか好きとかいう恋愛感情ではなく、家族に対する愛情のようなものだった。
もちろん恋愛感情だって含まれていたけれど、それよりももっと『家族』という意識が強かった。

「逝かないでくれ」

そんなことを言われてもなぁと言いたかったけれど、言う気力すら残されていなかった。
ああ、泣いているのだろうか。
だとしたら、目を閉じていてよかった。
あの人が泣くところなんて想像できないし、したくもない。
だってあの人が泣くとか気持ち悪いし。

「どうして私を置いていくんだ……!」

置いていくつもりなんて、更々無かったんだよ、ごめんね。
だって貴方より私の方が年下だから、私が置いていかれる方だと思っていたの。

『ごめん』

頭に直接響いた声に、私は笑いそうになった。
笑う気力は当然なかったから、内心で笑っておいた。
思うに、脳みそでエネルギーを使っているから目を開ける気力さえないのだろう。
意識して目を開けるのなんて初体験だよ。

「   」

あーあ、もう駄目だなと思ったから、何とか唇だけ動かした。
なるほど、声を出すのもエネルギーを消費するんだな。
さよならは言わなかった(まぁ声すら出ているか怪しいけど)。

「逝くな――!」

修さんの慟哭が、私を世界から隔絶した。





「ごめん。こんな結果を見るために、おまえを彩雲国にやったわけじゃないのに」

「ひょんがしおらしいとか、不気味だわあ……」

長くはなかった。
けれど、決して短くもなかった。

「出会わせてくれただけで、感謝してるよ、ひょん」

「そんな満足気な……」

ひょんは悲しそうに眉をひそめた。
こんな表情も出来るのか。
ある種のトリックスターのようなものだと思っていたけれど、違ったのだろうか。

「もう一度、挑戦させてくれ」

「いや、何をだよ」

「おまえの記憶を消して、元の世界に戻す。同じ世界でこれを行うことはタブーだが、世界が違えば許されている」

「私は、あのころの私に戻るの?」

「それはない。記憶は無くとも、心が精神が魂が覚えている。もうあのころのお前ではないだろう?」

それは何となく、分かる気がする。

「モノにだって記憶がある。お前が記憶を持って生まれたのは、前の体の記憶を移したからだ。だが、今回はそれをしない。元の世界に戻すことすら、真理に反する可能性がある」

何となく、パソコンみたいだなと思った。
ハードディスクをパソコンに繋ぐ、みたいな作業だろうか。
いや、違うな。
引っ越しみたいなものだろうか。

「お前は未だ、辛うじてこの世界と繋がっている。そして元の世界とも。だから、今の状態のまま元の世界に戻れば、お前はまた生きられる」

「――何で私にそこまでしてくれるの」

「余りの平凡さ故に非凡なお前は、いつも周りに救われている。羨ましいかぎりだよ。――目印は桜だ。忘れるな」

「目印? 何の目印……」

ぐんっと勢い良く引っ張られ、私は急速に意識を失った。
またかよ!






理由? そんなもの必要ないね
―――――――――――――――
導入的な話。
何で導入の方が後に更新されるのかというと、単純にそこまで考えてなかったから。
ぶっちゃけ本編ではこんな展開にはなりません。


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