怠惰に二人
!微エロかもしれない











「寒い。けど苦しい」
「どっちだよ」

全裸の修太郎に、同じく全裸の私はのしかかられている。布団の中でそんなことをしていれば、甘い雰囲気になったりするのだろうが、あいにくそんな雰囲気は数分前までのものだった。
容赦なくのしかかる修太郎に、チビな私は息も絶え絶え、死にそうである。普通はそういうことの後ってそっと抱き締めるものではないのだろうか。修太郎に処女を捧げたから他の男のことなんて分かんないけど。

「退いてよー。息苦しい」
「テメェが寒いって言ったんだろ」

あきれ顔の修太郎をぽかりと殴った。だからって押しつぶす奴がどこにいる。殺す気なのだろうか。
いや、それよりも重大なことがある。

「ん、そろそろ抜くべきだと思いますけど」
「あ?」
「抜くべきだと――」
「あ?」

もういいよ、分かった、分かったよ。抜きたくないんですね。だからのしかかったままなんですね。
修太郎の厚い胸板に押しつぶされた人並みの――身長の割りには少し大きい――胸が、呼吸をするたびに更に修太郎の胸板に押しつぶされて居たたまれない。この変態め。

「子ども出来たらどうすんのよー」
「結婚すればいいだろうが」
「それは大変うれしいけど、修太郎の薄給じゃあねぇ」
「俺だって貯金くらいしてる」
「あら意外。煙草とお酒と銀幕に全部注ぎ込んじゃっているのかと」

私の言葉に怒ったのか、修太郎は眉根を寄せて、私の唇に噛み付いた。修太郎との口付けは煙草の味がする。その苦みは余り好きじゃないけど、修太郎からの口付けは好き。

「ねぇ、修太郎。私って結構童顔なのよ」
「あ? それがどうしたってんだよ」
「いやね、傍から見たら修太郎が幼女趣味だと勘違いされるだろうなあと思って」
「てめえ……!」

そういってがんがんと突かれるものだから堪ったものじゃない。大家はもう既に寝てるし、そもそも耳が遠いから気にする必要もないから、夜にこういうことをするのは嫌いじゃない。だがしかし、甘い雰囲気のかけらもないじゃないか。まぁ、私が煽った所為もあるのだろうけど。
こうして夜は更けていく。明日はせっかくのお休みらしいので、私がお昼でも作ってあげようじゃないか。




「寒い」と恋人である春子が云うので、繋がったままだが抱き締めてやれば、今度は苦しいと云う。
だがしかし、自分の胸板に押しつぶされた胸が何とも官能的だ。繋がったままなのもいけない。
春子が途中酷く艶やかに息を吐くので、なんとか理性を総動員しているのに、春子は抜けと煩い。今抜いたらそれこそ大変なことになるのが分からないのか。
もう少し落ち着くまで待てと云いたいところだが、そのまえに春子が口を開いて子どもが出来たらどうするんだと文句を云っている。そんなもののために春子を抱きたいわけじゃない。もっと低俗な、むず痒くなるような思いの所為だ。

「結婚すればいいだろうが」

意を決してそう云えば、春子は驚いたような呆れたような顔をして「修太郎の薄給じゃあねぇ」と云った。何もそんな顔しなくってもいいだろうが、と云いたいのを抑えて貯金だってしていることを告げれば、意外そうな顔をした。
そこまで意外だったのだろうか。こう見えても、自分では中々几帳面な性格をしていると思うし、将来を考えて貯金だってそんなに多くないがしているのだが。
煙草だって酒だって、別に注ぎ込んでいるわけじゃない。当面暮らせるくらいの金は貯えてある。云っていないから知らないのは無理無いかもしれない。
何だかむしゃくしゃして、春子の口内を荒らすような口付けをした。もう理性とかどうでもいい。子どもだって出来ても構わない。そうなれば、ぎゃあぎゃあとうるさい春子も黙って受け入れるだろう。
幼女趣味だ何だと喚く春子を黙らせるためにもがんがんと突き上げれば、とりあえず余計なことは云わなくなった。行為に集中しているのか、他のことを考える素振りも見せない。
この調子では明日も二人でだらだらと過ごすのだろう。






怠惰に二人で

(しゅーたろー、ご飯出来たよ)
(……)
(あ、夫婦みたいとか思ってるわね?)
(……ぶん殴るぞ)


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