ご用心
「近寄らないでくれる?」

「照れなくてもいいんですよ、春子さァん」

「五月蝿い黙れ変態が」

いつどこで誰が照れたと云うんだ。
冗談も程々にしろと云いたいところだが、この男がいつもの調子で「冗談ですよゥ」なんて云っても殴りたくなる。
それこそ冗談じゃない。

「変態だなんて――」

「云っておくけど、誉めてないから」

おまえは女かと叫びたくなるくらい顔を恥ずかしそうに赤く染めたこの変態を殴らなかった私は偉いと思う。
いくら何でも暴力はいけないよな。
こんな怪しいですと云っているような男を殴って、逆に私が殴られたりしたら嫌だし。

「春子さァん、付き合ってくださいよぅ」

「アンタを地獄まで送り届けるだけなら喜んで」

「死んでも尚一緒に居てくれるんですね! 結婚しましょう!」

「ちょっと、何でそうなるのよ!? アンタ絶対嫌われているでしょ!」

何なんだ、このウザさは。
こいつはアレだな、度の過ぎたお調子者で同期とかに「何なのアイツひそひそ」と云われる奴だ。
しかも急にネガティブになったりして余計に「うわ、何なのアイツひそひそ」と云われる奴だ。

「何でそんなこと知って――あっ、もしかして春子さんは僕のストーカー――ごふッ」

殴りました。
流石にこの発言には温厚な私も堪忍袋の緒が切れた。
よろめいた男に回し蹴りを決める。
何か気持ち悪く笑ってたから。

「はぁはぁ、春子さん最高です」

「気持ち悪いわ!」

アッパーが決りました。
何なんだこの男。
出会った当初はいい人だったのに!
こんな本性があったなんて!
くそぅ、出会った頃の印象の所為か、変な関係になってしまった。
本気で警察に通報しようかな……。






恋する変態にご用心



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