そうやって
中禅寺奥さん設定。
最後の方にちょろっと下ネタあり。
中禅寺さんは出てきません。










何があったのか、という気持ちだ。
取りあえず私はぐっすりと眠りたかった。

「君が疲れているのは分かるけどさ、僕にだって事情があるんだよ」

「ええええ、そりゃあそうでしょうとも。でもですね、関口先生。関口先生に事情があるように、私にも印刷所にも事情があるんです。まさか原稿出来てない何ていいませんよね」

関口先生はうぅだかあぁ唸った。
この様子では間違いなく原稿は出来ていないだろう。

「そんなこと云ったってなぁ」

「出来ていないのなら出来ていないと仰ればいいんです。どうしてもっと早くに云ってくれないんですか。そうすれば印刷所には延ばしてもらったりできるのに」

「あぁ、すまない」

「おや、今日は珍しく素直ですね」

どうしたんです、関口先生、と私は尋ねた。熱でもあるんですか、とも。
関口先生は相変わらずあぁとかうぅとか唸るだけである。

「君は段々と京極堂に似てくるね」

「あの偏屈親父とですか?やめてくださいよ」

しかも似ていない。
冗談きついぞ、関口先生。
京極堂――中禅寺秋彦は確かに私の旦那なのだが、だからといって似ているとは酷い。

「京極堂は君を僕の担当にするのでさえ渋ったんだ」

「ええ、あの時は大変でしたねぇ」

「君と京極堂は年がら年中喧嘩してるよ。どうして結婚したのか不思議なくらいさ」

そんなのは至極簡単で、周りに丁度良い常識人が居なかったからだ。
いや、あの偏屈親父も変人ではあるのだが、その当時の知り合いではまだマシな方だったのだ。関口先生でも良かったのだが、生憎結婚したばかりでそれでは話にならないと候補から外した。これは勿論関口先生には云っていないことなのだが、雪絵さんにはぽろっと洩らしてしまったことがある。その時の雪絵さんは余りにも恐ろしかった。
まぁ、その当時は知り合いと云っても迷惑探偵と木場さんくらいのもので、結局あの石地蔵になってしまったのだ。私は木場さんが良かったのに、だ。
何故どうしてあの偏屈親父になったのか、甚だ疑問ではあるのだが、どうも当時の私はあいつに唆されたようだ。確か木場さんに会えなくて泣き付いて、何だかんだと話しているうちに結婚する羽目になったのだ。私はどうもその辺りの記憶がないのだけど。
まぁ、もう少し待てば若い男の子と知り合えると知っていたのなら、私はもっと違う人を選んだに違いない。

「君たちって似たもの夫婦だよね」

「それはどういう意味ですか、関口先生」

私も偏屈だって云いたいのだろうか。あの偏屈親父は理屈しか捏ねない。しかも納得しそうな自分がいるから、ついつい悔しくなって言い返してしまう。
あれ、そうすると私はあの偏屈親父を少なくとも嫌っていないということになるんじゃ――いやいや、ないない。

「あ、そうだ」

変なことを考えてしまった。気を紛らわそうと探った鞄に、関口夫妻に渡そうと思っていたものがあったのだ。

「これ、今度の新作なんです。雪絵さん、観たいって云っていましたからお二人でどうぞ」

「どうぞって云われたって恋愛ものじゃないか」

「少しは奥さんに付き合ってあげたらどうなんです。どうせ原稿も出来上がっていないんでしょう。だったら気分転換にもなるじゃないですか」

私がそういうと、関口先生は君こそどうなんだい、と云った。

「君だって京極堂と出掛ければいいじゃないか」

「あの出無精と?嫌ですよ。ましてや今度の新作は原作があるんです。何やかやと云うに決まっています」

私がそういうと、関口先生は身に覚えがあるのか、あぁと唸り何処か彼方を眺めた。

「でも、君たちはそんな生活で満足しているんだろう」

それは疑問系ではなく、確認するような口調だった。

「そうですね。何だかんだ云って私も納得して結婚した訳ですから、嫌いでは無いんでしょう。仮令好きになることがあっても、それでもきっと私とあの人の関係は変わりませんよ。まぁ、何十年も経てば別でしょうけど」

私とあの偏屈親父の日常は、少なくとも何年間は変わることはないのだ。






そうやって段々と好きになっていくのだ

(あんなに偏屈でも夜は過激なんですよねぇ。どうしてでしょう?)
(そうなのかい?君たちもやる事はやってるんだね)
(そうですね…あの人あぁ見えてエロいんですよ)


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