「伊佐間さーん」
「ん?なぁに、春子ちゃん」
「は、離してくださいー!」
私は現在進行形で伊佐間さんに抱き締められている。
ぎゅうぎゅうと抱き締められ、物凄く恥ずかしくなる。顔が熱くなるのがわかった。
恥ずかしいよ。
そう思ったから、素直に離してくれと頼んだのだが、伊佐間さんは離してはくれなかった。
「恥ずかしいですよう」
「嫌。離さない」
ええ!
更にぎゅうぎゅうと抱き締められた。
伊佐間さんの胸に、頭を押しつけられる。
伊佐間さんの心臓の音が、よく聞こえた。
それだけで、ドキドキする。
「あの、どうして…?」
「だって、離したら春子ちゃんは逃げちゃうでしょ」
「そ、そんなことありませんよう」
逃げるって何。
私は伊佐間さんのもとから離れたりしないのに。
もっと優しく、抱き締めてほしい。
だって、伊佐間さんの顔が見えないのは、とても恐いから。
「本当?」
「本当です!だって私は、私は――」
言っても、いいのだろうか。
伊佐間さんはもうとっくに成人した大人で、私は高校を卒業したばかりの子供。
一回り以上も年は違う。
伊佐間さんは、変な目で見られないだろうか。
不安なことは、たくさんあって。
でも、それでも。
「私は、伊佐間さんが大好きですから」
「うん。知ってる」
「ええ!知っていたんですか!?」
私の不安は何だったんだのよ。
そう叫びたくなったが、受け入れてくれたのだと思うと、そんなことはどうでもよかった。
「あのね、春子ちゃん。僕は歳の差なんて気にしないよ」
「――?え、それはどういう…?」
「付き合ってください、ってこと」
耳元で囁かれ、頬が熱くなる。
ああ、どうすればいいんだろう。
「返事は?」
伊佐間さんは耳元でくすくすと笑った。
「うう、もちろん、お受けします……」
今の私の顔は絶対赤い。
「耳まで真っ赤だよ」
「言わないでくださいよー!」
ああ、熱い。
心臓はバクバクと鳴っているし、冷や汗も流れている――ような気がする。
「うん」
「――!!」
急に、その、口付けられた。
誰に、って私が伊佐間さんにだ。
「いいい、伊佐間さん!?」
「好きだよ、春子ちゃん」
KISSED ME!
(伊佐間さん、私も、好きですから)
(うん。知ってるよ。いつも見てたから)
(わ、私も、伊佐間さんのこと見てました……)
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bkm