恥ずかしい

煎餅座布団に座る。
ぺちゃんこだ。

木場さんの家にお邪魔している。
別にコレといった用事はなかったが、近くによったついでだ。

「何にもねえが――」

「お気遣いなく。突然押し掛けてしまったこちらにも非がありますから」

春子がそういうと、木場は安心したように笑った。
―――初めて見た。
春子は木場の笑顔を見たことはなかった。
記憶にあるのは、不機嫌そうな顔だけ。

「木場さん、あなた――笑っていたほうが素敵ですわ」

春子はそう言ってにっこりと笑った。
その笑顔を見た木場は、顔を逸らした。

「もう、いくら私が醜女だからって――」

「おい、馬鹿言うんじゃねえや。誰が醜女だって?」

木場は春子の頬を引っ張った。
しかし、春子は引っ張られてもへらりと笑っていた。
気持ち悪いと木場は春子の頬を叩いた。

「いひゃい。――もう、木場さん何するんですか」

「お前さんは俺が今まで見た中で一番可愛いぜ」

「―――」

春子は目を見開いて木場を見た。
その視線に木場は気恥ずかしくなり、目をそらした。



恥ずかしさの裏には

(木場さん。今のもう一回お願いします)
(殴るぞ)
(では、私の心のなかに留めておく事にしますね)


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bkm
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