「女学生だ!」
ドン、と背中に重みがかかった。
振り向かなくても、それが誰だか分かる。
大好きな榎木津さんだ。
「榎木津さん、重いです」
「春子!ずっとその格好でいなさい!」
話がつながってない。
でも、それにももう慣れてしまった。
「ずっと、って制服でですか?」
私がそう聞くと、榎木津さんは頷いて言う。
「そうだ。春子のセーラー服は可愛い!」
う、わっ。
顔が赤くなる。
可愛いだなんて、いや、嬉しいのだけど。
榎木津さんのような素敵な人にそんなこと言われると、たとえお世辞でも嬉しい。
「春子、何か勘違いをしているね。僕は心から可愛いと思ったからそう言っているのだ」
「え、榎木津さんはエスパーですか?何で私の考えていることが分かるのです?」
すごい、何で分かるんだろう。
それに、彼はお世辞を言えるような人物でないことを失念していた。
だからこそ、余計に嬉しい。
ぽかぽかとした気持ちが溢れ出てくる。
「そんなことはどうでもいい!それより腹がへった。何か食べにいこう」
にこにこと私の腕を掴んで歩く榎木津さんに、私もにこにことしてしまう。
榎木津さんはすごいな。
榎木津さんと会うまでは、こんな気持ちしらなかったもの。
私がそういうと、榎木津さんは「じゃあ、ずっと僕のそばにいればいい」と言ってくれた。
嬉しい、嬉しいな。
私、榎木津さんのそばにいてもいいのね。
「私、榎木津さんと出会えて嬉しいです」
「僕もだ!」
ああ、幸せです。
榎木津さんの背中に、心の中でそう投げ掛けた。
そしたら、まるで伝わったみたいに、振り返った。
「春子、僕を好きになれ」
「そんなこと、言われなくても大好きですから」
抱きついた背中
(温かい…)
(春子、スカートの丈はもっと短くしなさい)
(これ以上ですか!?)
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bkm