榎木津さんは変わっている。
容姿はまるでお人形のようなのに、行動はとても突飛なのだ。
あそこまで容姿と言動が一致しないのも珍しいだろう。
そして彼は――、
「春子!何をぼうっとしているんだ」
僕と一緒にいるのにぼうっとするな!と言う彼は子供そのものだ。
純粋なのだろう。
けれど、強靱なのだ。
でなければ、人の過去を視て平気でいられるはずが無い。
これが榎木津さんじゃなくて、関口さんだったらとっくに自殺しているかもしれない。
榎木津さんは視たいと思って視ているわけではないのだ。
「春子、どうかしたのか?」
そう首を傾げて聞いてくる榎木津さんに、愛しさを憶える。
「榎木津さん、春子はずっとそばにおりますよ」
「それは心強いな!」
そう言って笑う榎木津さんが、座っている私の膝に頭を乗せた。
膝枕か――。
俯くと榎木津さんの顔が近くなり、じっと榎木津さんに見られているような気がして、恥ずかしかった。
「寝ないのですか?」
「春子をもっと見ていたいからな」
どうして彼はこうも気恥ずかしい台詞をさらっと言えるのだろう。
ああ、顔が熱い。
膝枕の憂欝
(うう、ドキドキして落ち着かない…)
(春子、一緒に寝よう!)
(それは無理です!心臓が保ちません…!!)
prev next
bkm