「で、最近どうなの?」
「何がヨ」
「転校して、クラスの人と仲良くなったの?好きな人は?」
「好きな人?」
「うん」
「………わかんないヨ」
駅の近くに言った時のこと。
私は、定期の更新に行くため事務所に寄った。
そして、久しぶりに見る、転校する前の学校の友達にあったのだ。
「分かんないって…。まぁ、アンタはそーいうところが男にうけるのかもね」
「モテてないアル。全然」
「アンタ…はぁ…神楽が気づいてないだけじゃないの。私、知ってるよ?アンタは鈍感だからね」
「それでも、今も好きな人はいないヨ…たぶ……ゴトッ!!」
何事か?
そう思い、音のした方を見た。
そこに居たのは、なぜかしりもちをついて頭から水をかぶっている…
「お、沖田?」
「う…えっと、その…」
「どーしてここに居るアルか?」
どうしてだろう。
しかしまぁ、おかしな格好だ。
しりもちついて頭から水かぶって…。
「神楽、この人は?」
「え、あぁうん。沖田総悟って言うアル。私の学校のクラスメート」
「ふーん。カッコイイね。でもまぁ、私の彼氏の方がカッコいいけど!」
「惚気なんて聞きたくないアル。そうだ、沖田。これから何か用事あるアルか?」
「い、いや…ねえけど…。今俺一人だし」
沖田は少々、額に汗をかきながら言っていた。
なんだか面白い。
「それだったら、定期の更新に付き合ってくれないアルか?行こうとしたら友達と会っちゃったアル。行きたいって言うのに、どーしてもっていうから…」
「ひっどーい神楽!確かに私そう言ったけど!」
「冗談ヨ。冗談。で、沖田ついて来てくれるアルか?」
「べ、つに…いいぜィ」
「よし。じゃ、私ちょっとお手洗いに行って来るヨ。友達と仲良くしてて」
「あぁ」
「いってらっしゃーい!か、ぐ、ら」
* * *
「あのさー」
さっきとは全く違う態度の神楽の友達に少々驚く。
彼女は、コップに入ったアイスコーヒーを軽くストローで回しながら言った。
「沖田君、だっけ?神楽の事好きなの?」
「えっ?」
「まぁ、態度みてりゃバレバレなんだけどね」
にこりと笑ってそう言う彼女はある意味悪魔だ。
「私、神楽が大好きなの」
「へい」
「だからさ、大切にしてあげて」
「………」
「あの娘、鈍感ニブチン天然馬鹿だからねぇ…。難しいけど」
恐る恐る目の前の彼女の顔を見た。
というか、なんか俺ってヘタレじゃね?
そうこうしているうちに、神楽がお手洗いから戻ってきた。
「ごめんアル!髪直してたら時間が経っちゃって…」
「あぁ、じゃ、行くかィ?」
「うん!じゃあまたネ。今度一緒に遊ぼうヨ!」
「分かった!ほら、神楽、彼氏さんがまってるよ」
そう言うと、神楽の友達は、お会計を済ませてさっさとカフェをあとにした。
「……彼氏って…」
「き、気にする必要ないアル。いっつも私に意地悪ばっかりしてくるのヨ」
「……いい友達なんじゃねえ?」
「そ、そうアルナ!えへへっ」
そう言って笑う神楽は、本当にうれしそうだった。
なんだか俺も嬉しくなる。
「あ、そういえば俺も定期更新しなきゃだった」
小さくつぶやいた言葉は、しっかりと神楽に届いていたのだろう。
ふははっ
なんて笑い声が聞こえた。
可愛くってしょうかない