その日、かなめは屯所内の廊下を一人で歩いていた。珍しく、神楽と一緒に居ないかなめに、周囲の隊士らは不思議に思ったが、四六時中一緒に居るので、たまには一人でいたいのだろう。そう思って、彼らは何も言わずにただ、歩いて行くかなめの後ろ姿を微笑みながら見つめていた。

「かなめ?チャイナ娘はどうしたんだ?」

クルリ、と、かなめが振り返った先には、タバコを片手に持った土方がいた。土方は、タバコに火をつけようとしたのだが、かなめの体に悪いだろう。そう思ってタバコをそのままにポケットの中へマヨライターをしまう。

マフラーに手袋をしたかなめの姿に、土方は、外に遊びに行くのだろうかと、不と、疑問に思ったのでかなめに聞こうとしたのだが、かなめによってそれは聞けずにいた。

「まーまがね、先にお外へ行っててって言ったの。良い子にまってたら、駄菓子屋さんで酢昆布買ってくれるって。まーまはその間、隊服に着替えるんだって!」

「あぁ。もう来たのか…って、今さらだな。隊服なんて。近藤さんが、松平のとっつぁん所に行った時に貰って来たんだろうよ。あの女好きの野郎のことだ、どーせまたミニスカートとかじゃねえのか?」

「うん!まーま凄く似合ってた!」

「それを見たらアイツが黙っちゃいねえな」

その土方の言葉に、かなめは頭の上に一瞬クエスチョンマークを浮かべたが、パッと目をキラキラさせて大きくうなずいた。

「そーだね!総悟にーちゃん、まーまの事大好きだもんね!」

「本人の前で言ったら大目玉くらうな」

何としてもそれだけは回避したい土方は、これ以上かなめと話していると、回避もくそもない。そう判断したのか、良い子にまってるんだろ?そう言って、その場を立ち去った。

土方が立ち去ったのを、かなめは確認すると、たどたどしい足取りで、屯所の玄関へと向かった。



* * *



一方、神楽は、初めて着る、女物の隊服(特注)に袖を通していた。

「…これがこうなって、こっちのスカートをこう…って、寒いのにこんな短いスカートやってんないネ。あのクソジジィ」

愚痴をこぼしながらも少しずつだが隊服を着ていた。

以前近藤から貰っていた刀を腰に挿せば完成だったのだが、思わぬ人物の登場で、かなめが待っている玄関へ行くのが少し遅れた。

「よお、ちゃんと着れてんのかィ?」

「サド。乙女のおきがえに、何の声掛けもなしに入ってくるなんて最低アル。なにか用かヨ」

「んまぁ、すこし」

沖田にしては珍しい神楽への用に、なにか不安を感じつつも、沖田の話を聞こうと、不本意ながらも自室へと沖田を入れた。

「分かった事があるんでさァ」

「事件の?」

「ったりめェだろィ。これは明後日にある会議でも言おうと思ってた事なんだがねィ。調べていくうちに妙な奴らが浮かび上がってきたんでさァ」

「妙なやつら?」

畳の上で胡坐をかいて、真剣な面持ちで神楽を見つめる沖田に、神楽自身もいつの間にか真剣に沖田の話を聞いていた。腰に挿そうとしていた刀は、丁寧に神楽の後方へと置かれていた。

「あぁ。まァ、簡単にいえば隠密。そう言った役柄になんだけど、その隠密っていうのが、うちのザキとかそう言った奴らじゃねえんだ」

「つまり?」

「……お上の、直下に値する奴ら。天導衆とも繋がりがあるって言やぁ、そうとうな手慣れだろうし、頭の回転も速いだろうな。武装派集団なんて言われちゃぁ俺たちはうまく絡みこめないんでさァ。それで、この前捕まえたネズミがいんだろ?誰だっけ…」

「たしか、篠崎勘助(シノザキカンスケ)だったような気がするアル。今までで約105件以上の窃盗及び殺害の疑いがあるアル。…で、そいつをどうするアルか?」

「そいつの話によっちゃあ、幕臣のお家にも盗みに入ったらしいんでさァ。その時に妙なもんを手に入れたって言うからねィ。その妙なもんについて問いただしたら、浮き上がってきたんでィ」


隠密起動、元総司令官副官、中沢吉一って奴が

「中沢吉一?」

「あぁ、副官なんてそう表には出ないらしいからな、だから、奴を知ってるのはその、幕臣と機動隊の奴らしか知らねえ。それで、会議で知らせんのはここまででさァ。その妙なもんってもんが見つかりゃあこっちのもんなんだけどねィ」

沖田は、はぁっと溜め息をはく。そんな沖田の姿を、神楽は黙って見つめていた。

「…なんでィ」

沖田はそれを不快に思ったのか、はたまた別の意味でかは知らないが、神楽を横目に見た。

「…お前、そんな大事な事、先に私なんかに言ってもいいアルか?」

それは、神楽が率直に思った疑問だった。沖田は近藤を一番に信頼しているし、何かと嫌がらせをしながらも、土方を何気にしたってもいる。

そんな彼が、どうして近藤や土方よりも先に自分にその事を言って来たのか。そこがどうしても分らなかった。

「悪いかよ。…それより、かなめ待たせてるんじゃねえのかィ?」

「そうだったアル!!駄菓子屋に行く約束だったネ!」

後方に置いてあった刀を腰に挿す事をも忘れた神楽は、急いで立ち上がると、屯所の玄関へ足を進めようとした。

しかし、またもや沖田からの声掛けによって仕様がなく思いながらも振り返る。

「チャイナ、スカート短すぎ。お前のチンチクリンなパンツが丸見えだぜィ?」

その一言により、神楽の中にあった沖田への好感度が減少したのは言うまでもないだろう。少しでも、先ほどの話で沖田を見直した自分がバカバカしい。そう、神楽は思った。

神楽が出て行った後の部屋で、沖田はまた一つ溜め息をついた。







それはすぐ目の前に、






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オリキャラ登場
この2人も大変必要なキャラになると思います。

沖神サイトなので、一応…ね?


書き方を忘れました。


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