夕暮れ時に、局長室には近藤を含め計5名が集められていた。
それぞれ、神妙な面持ちで視線を近藤へ向ける。

「今日、お前たちをここへ呼んだのは今回の事件についてでた。じゃあ、トシから報告を頼む」

言われて、土方が答えようとしたところで神楽が制をかけた。

「ちょ、待つアル!私、ここ数日お前らの話し聞いてるけど、『今回の事件』って何アルカ?依頼受けた時も、例の事件の事しか聞いてないし意味が分からないヨ!わけも分からないまま例の事件調べてたアルヨ!!?」

「あぁ、そうか。そう言えばチャイナさんには詳しくは言ってなかったっけ…」

「ちゃんと教えてヨ。『今回の事件』の事を」

「あぁ。話すとも。ただし、内密に頼む。この話は真選組内でも、俺たちしか知らんのでな。……座敷わらしの様な話なんだ。数日前に起こった事なんだがな、ある小さな村があったんだ。数か月前くらいから治安が悪くなってな。チャイナさんが真選組(ここ)に来る前に、山崎をその村へ送ったんだ。その時はまだそこには人が居た。しかし、先日、真選組隊士を送ったときには…」

「…人は居なかった……アルカ」

「あぁ、そう言う事だな。な?座敷わらしみたいな話だろう?村の人間がたった数日でいなくなるなんて普通じゃありえないからな」

そう言う近藤に、神楽は続けて疑問をぶつける。

「待つヨロシ。それと、例の事件とではどう関係があるアルか」

「最初は俺たちも関係があるなんて考えちゃいなかったよ。だが、数十年前の事件と、今回の事件とは、共通点が合い過ぎなんだ」

「共通点……アルカ?」

「あぁ、その共通点なんだが……」

と、土方が言いかけた時、局長室のドアがバンッと大きな音をたてて開き、その向こうには原田が驚いた様な息を切らした顔で立っていた。

「どうした、原田」

「副長!…む、村が……!!」




* * * *



「……何アルカ……ここ…」

そこで神楽が見たものは、村人が全く居らず、廃墟のような姿をした家々が並んでいた。
屋根は崩壊し、空から見ると中が筒抜けに。そして、窓は破片が飛び散り、まるで最初から人が住んで居なかったかのような状態。
それらを目にした神楽たちは、自身の目を疑った。

「たった一晩でこの有り様ですよ。どーしたもんかね。どうします、局長」

原田が、目を細めながら近藤に問う。
近藤は、溜息を吐きながら「生存者の確認をしろ」とだけ言うと、パトカーの中に入り込んだ。
それを追いかけるかのように土方が乗り込む。
パタンとドアを閉めると、近藤に土方が話しかけた。

「近藤さん、どう言う事だよ、ありゃァ…」

「あぁ。さっきまで人が住んでた気配もねえ。あるのは廃墟だけだしな。原田には生存者確認を一応取らせたが…」

「いるわけねえよ。あんなとこに」

土方は、額に手を置いて溜息を吐く。
近藤はそれを見てハハッと苦笑いした。
そして小さな声で「最近、溜息をはく事が多くなったな」とつぶやいた。
それが聞こえたのだろう、土方は、そうだな。とだけ答えると車を出せと隊士に合図した。




* * *




神楽たちは村の中に入っていた。
そして、家のなかへはいって行く。

「やっぱりどこにも誰もいないアル」

「たった一晩でこんなになるもんなのかねィ。どんなブツを使ったんだか。怖くて仕方ねえや」

そう零す沖田に、原田がプッと小さく笑うと、それに気づいたのか沖田がカチャリと刀を取り出すと、どっと冷や汗のようなものが出てきたのか、「き、気のせいですよ、隊長!!」と沖田を宥め始めた。
そんな様子を、神楽が横目に見ながら山崎に話しかける。

「いつもあんなんやってるアルカ?」

「えぇ、まぁ…。楽しいもんでしょ?」

「万事屋の方がもっと楽しいアル」

ハハハと笑う山崎を、沖田が今度はギンッと睨みつける。

(沖田隊長も、素直じゃ人だから)

山崎は、そう心の中で呟いた。
その時、神楽が小さく声をあげた。

「どうしたんでィ。チャイナ」

「………こ、これ」

そう言って『コレ』を小さく指さす神楽。
その手が少し震えていることに、沖田は気がついた。

「おいコレ…。山崎!」

沖田が見た物。それは焼死体と言うものだった。
沖田に呼ばれた山崎はすぐさまその焼死体を覗き込む。

「コレを運び出せ。今すぐにだ!そんでもって調べさせろ。歯形でも、なんでもいい。コレの原因になったもの、関係するもの全部だ!」

「はい!」

そして、どこから取り出したのか、白い布で焼死体をくるむと、原田と二人で運び出した。
沖田は、そんな二人を見送ると、神楽傍へかけ寄った。

「おい、チャイナ。大丈夫かィ」

「…だ、いじょうぶアル。ちょっとびっくりしただけネ」

「テメー、いつもエイリアンハンターしてたんじゃねえのかよ」

「…うっせ。こちとら相手にしてんのはお前らと違って人間じゃねーんだヨ。一緒にすんな馬鹿ヤロー」

そう言って、神楽は、沖田が差し出した手を不本意ながらも取り、立ち上がった。
一瞬よろめいたが、沖田がなんとか支えたので倒れる事は免れた。

「おいサド。さっきの焼死体、女アル」

「どうして分かるんでィ」

「……死体の中に死体があったアル。………分かるか?」

「さーな」

はぁっと、神楽が息を吐くと、少し目を潤ませて言った。

「妊婦って意味だヨ。…どうなってるネ。廃墟のようになった村。居なくなった村人。…そしてこの焼死体…」

神楽が顎に手を当てて、どこぞの少年探偵のように考え込んでいた。

「おいチャイナ」

「……何アルカ」

神楽はそう言うと、ジッと沖田を見つめた。
その瞳に、呼んだ本人である沖田はなぜか心臓の動きが早くなるのを感じたが無視をして真剣な顔になった。



「俺さ、言い忘れてることがあるって言ったよな」





失われてゆく、脆いモノ






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