「よし!神楽!今日からお前は真選組だ!」

「………は?」

そう言われたのは今日の朝。
朝(と言っても11時過ぎ)、お腹が空いたので押入れと言う名の寝室を出て、居間へ向かった。
居間へ向かう途中に、襖の向こうからゴリラのような声と、マヨネーズみたいな声と、サドみたいな声がしたので、行くに気がしなかったが、やはり空腹には勝つことができずに、不本意だが、襖をあけて居間へ入った。




* * *




「お、神楽。はよ、ちょうどよかっ――…」

「銀ちゃーん。おはよー…お腹空いたアル。卵ごはんよこせヨ、コノヤロー」

「まって!銀さん今神楽ちゃんにお話ししようとしてたでしょ!そんな子に育てた覚えはありません!!」

「うっせーヨ天パが。私、お前みたいなマダオをパピーに持った事なんてないアル。ハゲも論外ネ」

「おい、この子実の父親をも拒否したよ。聞いた?今この子…」

銀時がそこまで言った時、銀時の向いに座っているマヨネーズ野郎が口を開いた。

「万事屋。話しの続きだ」

「話?銀ちゃん、何で税金ドロボーなんかが居るアルカ」

「うん。俺も良くは知らねーけど、お前に用があるんだってさ」

「私に?」

小首をかしげてマヨネーズ、もとい、土方に問いただす。
土方は咳払いをひとつ、コホンッ。として、神楽を見やった。
神楽も、土方、そして近藤、沖田を順番に見やる。
この面子は決して珍しい面子ではなく、ただ、この場にいつも居るはずの新八が居なかったと言う事だけだった。
なんらいつもと変わりはない。
しかし、彼らが、『万事屋』に居る事は珍しかったりするのだ。

「で、話って何アルカ」

銀時は何時ものような死んだ魚のような目をしている。
神楽はと言うと、それはそれは、もう鬼のような血相で、土方等を睨みつける。

「あー。チャイナさん?我々真選組では今、重要な事件を抱えている。それでだな、君を今日から数ヶ月間、真選組として仮入隊してほしいんだ」

唐突な近藤の発言に、一瞬だが神楽は瞳を見開いた。
しかし、それに怯む事無く言い返す。

「は?どうしてアルカ。その重要な事件ってのを言うヨロシ。検討しようにも検討できないネ」

「報酬はうんとつくんだが」

「内容によるアル」

神楽も、もう18だ。
それなりの事は考えるし、後先考えて行動するようにはなっている。
戦闘能力も、エイリアンハンターという仕事柄、数年前とは比べ物にならないほどにまでなった。自分を制御することも可能だ。

「…分かった」

そう言うと、近藤は、テーブルの上にある冷えた麦茶を一口ゴクリ、と、音をたてて飲み込んだ。
そして、少々視線を伏せたような態度でポツリポツリと話し始めた。

「数十年前に起こった事件が事の発展だ。これは表沙汰にはなってないがな…。ある、日本の一番西側に位置する、つまり肥前の国では、一部の天人が貿易を制限していた。肥前の国では貿易が盛んに行われていてな、いろんな星から日本は援助を受けていたんだ。まぁ、それは今でも変わらんが…。しかし、貿易をしていた数人の天人が、ある病原体を作ろうと肥前の国のある離れ小島の人間を使った。もちろん、長にも了承はとってあった」

そして、不と疑問に思った事を、神楽は近藤に尋ねた。

「ん?どうして長はすぐに了解をとったアルカ?」

近藤は、皆には見えないところで硬く拳を握った。血が出そうなほどに。
近藤の状態を悟ったのか、今度は土方が言葉を繋いだ。

「…脅されたんだ」

「脅された?その、天人にアルカ?」

「あぁ。離れ小島を使わせてくれないのならば、肥前の国の民ごと利用させてもらうぞ≠チて言ってな。それで長は思ったんだ。『肥前の国全体を使われるのならば、せめて、小規模で済ませよう』ってな。馬鹿としか思えねーけど。馬鹿が何を考えても所詮馬鹿。なんら結果は同じだろーよ」

「それで…、それで、その島はどうなったアルカ!」

「声でけーよ。……まぁ、今じゃ無人島ってやつだ」

神楽は、眉間に皺を寄せて静かに俯いた。
しかし、今の話に少なからず疑問を持ったのは銀時だった。
銀時は、テーブルに肘をつき、呆れた表情で真選組を見た。
そして、

「で、それをどうしてお前らが知ってんの?そんなにでけぇ事件だったら、俺らはみーんな知ってんじゃねえのか?表沙汰になってないなんて、おかしーぜ?」

「旦那ァ…」

そして、ここにきてやっと口を開いたのは沖田だった。
彼は足を組んで、ソファーにもたれかかっている。
彼のそんな態度に、神楽はイライラとしたが、話の腰を折ってはいけないと思い、しぶしぶ話を聞いた。

「これは、幕府内にしか知られていない極秘なんでさァ。誰も知りやしませんぜ」

「それを、俺たちに教えてもいいのかよ。てか、どうしてそんな数十年間も秘密に出来た?何か裏があるんじゃねーの?」

「流石は旦那。これには裏があるはずなんでさァ。でも、その裏ってぇのが分からねーでいるんですよ。俺たちが知っているのはここまで。後は、上官しか知らねえ事なんでさァ」

「それでだ」

バンッと、テーブルを叩くのは近藤だった。そして、ずんっと神楽の眼先まで詰め寄った。

「おい、近寄り過ぎアル。加齢臭が移るネ。おっさん」

「お、おっさ……。ま、まぁいい。どうだ?チャイナさん、やってくれる気になったか?」

「なァ。おかしいと思わないアルカ?お前らの話じゃ、私がお前らの仲間に入らなきゃいけない理由がしっかり入ってない。はっきり言うアル。どうして、私がお前らの仲間に入らなくちゃいけないのか」

「簡単でさァ。お前は戦闘力もある。不本意だけどな。それに、俺たちゃ、その裏ってもんが知りてぇ。旦那に頼んでも良かったんだが………」

沖田は、頭を掻きながらはぁーっとため息をついた。
そんな沖田を見てか、土方がタバコを吹かしながら言った。



「松平のとっつぁんが、テメーの事気に入ってるんだよ」

「は?」

「だから報酬も弾む。チャイナさんは二年前にエイリアンを倒しに一度地球へ戻ってきただろう?その時に、とっつぁんが気に入ったらしいんだよ。ガハハハ!!とっつぁんも目が高いな!!」

先ほどの雰囲気が一転。
いっきにいつもの雰囲気に戻った万事屋(眼鏡を除く)と真選組メンバー。
大笑いする近藤に、タバコを吸う土方。どこかふてくされている沖田に、唖然とする神楽。

そして場面は冒頭へ戻るわけである。



* * *


「ははは、チャイナさんすまんねぇ。なんせ男所帯なもんでね」

「全くアル!!銀ちゃんも銀ちゃんネ!狼の小屋にか弱い兎を投げ入れるようなもんアル!」

頬を膨らませて怒る神楽は、朝と違い鬼の血相ではなく、柔らかいものだった。

「はっ、か弱い?テメーのどこがか弱いってんでさァ。か弱いどころか、マウンテンゴリラのオスでィ」

「おいサドヤロー。かろうじてマウンテンゴリラは許してやろう。けどナ、オスってぇのは許さないアル。こんな美少女をマウンテンゴリラ…ましてやオスだと?!ふざけるのも大概にするヨロシ!」

「うっせ、クソチャイナ」

「おい、喧嘩は止めろ。屯所がもたねー。って言うか、俺たちがもたねーだろーが」

『死ね土方』

「俺いじる時だけ意気投合してんじゃねぇよ!!」



怒る土方をさらにいじる沖田と神楽を横に、近藤は大口を開けて笑っていた。




生贄の

カウントダウンは始まったばかり







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●肥前の国…現在の長崎(佐賀の一部地域を含む)

・長{大名(おさ)}



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