卒業式も間近に迫ったある日の事。
「じゃじゃーん!」
恋人である沖田が、私の席の前で二枚の紙っ切れをとりだし私の前に突き出した。
「お前何アルか。『じゃじゃーん』とか、そんなキャラだったかヨ」
「んな事ァどうでもいいんでィ。それよりさ、これ見ろィ」
「ただの紙アルな。そんなん、私に突き出して何さまアルか?」
「神様仏様総悟様でィ。つか、やっぱりどうでもいいんだよ、そんなの。しっかりこれ見ろ。旅行券。この前、姉ちゃんと一緒に買い物行った時くじ引きで当たったんでさァ」
いかにも良いだろー。なんて言う目で見てくるものだから、私は『良かったナ』なんて軽く流して、机上に並べられた弁当箱を手に取り食べ始めた。
「そんだけ?」
「そんだけアル。何かほかに用事でもあるアルか?」
「いや・・・。行きたくねぇーの?旅行・・・」
「は?」
「アホヅラになってんぞ。へー・・・そーかそーか。神楽さんは旅行に行きたくないと・・。誰連れて行こうかねェ。姉ちゃん連れて行こうかなァ〜・・・」
ニヤニヤ笑いながら私を見降ろしてくる沖田に、イラッとしたがここは抑えろ、と言い聞かせて沖田に言った。
「も、もしお前が私と一緒に行きたいなら・・・行ってあげてもいいアル・・・よ?」
「え?別に行かなくてもいいんだぜィ?俺だってそんなに無理にとは言ってねえし」
「ぅっ…。い、行くアル!!行かせてくださいサドヤロー!!」
「了解」
ニヤリと笑う沖田に、トクンと跳ねる心臓。どうにかしてほしい。かってに顔が赤くなって、一人でドキドキして。それでも沖田は平然としてる。羨ましい。
「それじゃ、ちゃんとそれまでに課題終わらせとけよ」
「え、お前はもう終わったアルか?」
「ンなわけねえだろィ。お前のを写す」
課題、絶対家に置いて行こう。
* * *
「うわァ!綺麗アル!沖田、早くこっちに来るヨロシ!」
「お前、俺に荷物全部持たせてるくせに生意気なんでィ」
「分かったネ!私がこの鞄持つから、お前はあと全部持つヨロシ?」
「あんまりソレ変わんねえじゃん。ま、いいか。不本意だけど」
そう言いながら私は、沖田と一緒に綺麗な沖縄の海を見る。沖縄と言っても、流石に冬であるため寒い事には変わりない。沖縄だからあったかいんじゃね?なんて言う沖田にまんまと騙されて私の今の恰好はミニスカートという傍から見ても寒い恰好。
沖田のヤロー。
「つか寒ィー…。俺先に旅館行くけど、一緒に行くかィ?」
「行くアル」
「じゃあホラ。手、繋ごうぜィ」
「う、うん」
でも、やっぱり恥ずかしい。良く見たら沖田の顔も真っ赤だ。可愛いな、コノヤロー。沖田と一緒に旅行に来れて良かった。なんて思ったのは私だけの秘密にしよう。
掌から感じる熱が、こんなにも愛しいと思ったのは何度目か。その熱が隣にあるだけで、私の緊張と心拍数は一気に上昇する。人間の心臓が動く回数は決まってるって言うけど、私は早死にしそう。沖田のせいだ。
「あのさ」
沖田の声に、パッと顔をあげる。
「な、何アルか?」
「いや、そのさ。最初っからお前連れていく予定だったんでィ。くじ引きで当たった時、一番最初に浮かんだのがお前だったし」
「・・・ほ、本当アルか?」
「おう。・・・て、どうしたんでィ。さっきからずっと足元見てるだろ?」
「き、聞くナ!・・・お前に言ったら、絶対バカにするアル」
「・・・え、もしかしてさ。・・・恥ずかしいとかかィ?」
「・・・うるさい!!!」
沖田の手を離してスタスタと旅館へ歩こうとした。だが、それはやはり沖田によって止められて、荷物を持っていない方の手でまた手を繋がれる。
「・・・大丈夫でィ。笑ったりしねーし」
だって、俺もすげー緊張してるし恥ずかしいから。
「・・・私たちって、バカアルか?」
「多分な。それも、おもいっきり」
「は、早く旅館行くアル」
* * *
「結構景色良いんだねィ」
「びゅーてふるアル!」
「ビューティフルな」
案外広々とした旅館に感心した。景色も良いし、旅館も綺麗だ。部屋の窓から外を眺める。先ほど見た、透き通るような青い海がいっぱいに広がっている。
「キレーだな。・・・お前の色みたい」
ぼそりと言った沖田の言葉はしっかりと私の耳に届いてあって、びっくりして沖田を見ると、まっすぐに海を見つめる沖田がいた。
あんまりにも真剣に海を見つめていたので、本当にうれしくなって沖田に抱きついたら、目を大きく開いて背中に手を回してきた。
「・・・ありがとうアル」
「・・・お前の色は、なんでも好きでィ。青も、赤も、桃色も」
「私だって、亜麻色も、朱色も好きネ!」
くぐもった声でそう言うと、どちらかともなく笑い合った。たまには、2人だけというのも良いかもしれない。冬季課題はまだ終わってないけど、しっかり持ってきたし、しょうがないから沖田にも見せてあげようなんて思った。
私って、沖田には甘いんだナ。なんて自分で思いながらギュウッと沖田を抱きしめた。
「ねぇ、沖田」
「なんでィ」
「また、一緒に来ようネ」
「当たり前でィ」
太陽に光が、水面に反射してキラキラ光っているようだった。
海の上のラブストーリー
(そういえばココ、混浴あるみたいだぜィ?)
(絶対課題みせないアル)
______________
きか様へ捧げます!
これは、3zなのか??
3z要素が課題しかないです。書き直しOKです。本当すみません!!
なぜ課題ばっかり?
私が課題で先生に怒られるからさっ!フハハハハハ!!