振りだした雪は、次の日の朝方には真っ白に積もった。寒さで起きてしまった自分の身なりは薄い寝床用が一枚はおってあるだけ。通りで寒いはずだ。

隣のには、すっかりと抜け殻化した妻のいない空間。もう朝食を作っているのだろうか。まだ温もりはあるので、まだまだ朝食には時間があると思う。2度寝しようと決め込んで頭まで布団をかぶる。

その時、手に不と何かが当たった音がした。紙のようなもの。何だろうと不思議に思って布団から顔を出すとそこには赤と緑のしましまでラッピングされた袋が置いてあった。

気になって中を開けてみると、それは財布だった。しかも、俺が前から欲しいと思ってたブランドモンの財布。きっと、これを買ったのは神楽で間違いないだろう。ここにメッセージカードだってあるし。

これは2度寝なんかしている暇はない。急いで布団から体を起して、隊服の中に入れておいた神楽へのクリスマスプレゼントを取り出す。ちょっと奮発して買った物だ。給料2カ月分とは言わないものの、結構な高さだった。

この日のために、俺が今までにないほどの真面目さを仕事で発揮した事はないだろう。いや、結婚指輪買う時もこんな感じだった。まぁ、そこはあえてスルーという事で。

「はよー・・」

いままでの貯金をはたけばもっと大きな家に住めたというのに、神楽が小さくてもいいというものだから小さめの一軒家を購入した。結婚してから約2年。子供も生まれ、家族間も順調だ。

ドアを開ければさわやかな笑顔を俺に向けてくる息子。やっぱり可愛いななんて思いながら、頭をひと撫でする。くすぐったそうに眼を細めて笑うのは、母親譲りなのだろう。

「総悟、おはようアル!・・・その。プレゼント見たアルか?」

「おう。サンキューな。高かっただろィ?」

「私の給料にかかればあんなのちょろいアル!!・・・でも、喜んでくれたみたいで良かったネ。買ったかいがあったアル」

ニコニコ笑った時に出来るえくぼ。それも息子と同じ。やっぱり神悟は母親になんだな。

「あのさ、神楽。これ。クリスマスプレゼントでさァ。そこらへんに売ってたから・・・その、買って来た」

神楽の掌にポンと乗せる。俺も、他人にツンデレなんて言えないかもしれない。だって、認めたくねえーけど今十分ツンデレしてるもん。俺。ま、神楽の場合はツンツンツンツンデレなんだけど。

「開けても良いアルか?」

「もう神楽のもんだから。好きにしていいぜィ」

「うん!」

綺麗にラッピングされた小さな包みを、神楽は丁寧に取って行く。指先の動きがしなやかで美しい。黒をモチーフにした大人の雰囲気を醸し出した包みに、神楽の白い指が映えて美しさを何倍にもしている。

きっと、これほどまでに黒が似合う女性は数少ないだろう。だって神楽が世界、いや、宇宙一美人で可愛いから。

「うわぁ!!ごっさ可愛いアル!簪って、高いんダロ?良かったアルか?」

「拾ってきたんでィ」

「はいはい。さっきは売ってたって言ってたのに、変なパパでちゅねー?」

神楽は簪を大事そうに重箱に入れると、神悟を抱きかかえて言った。神悟は何を言われているか分かっているのだろうか。たぶんまだ分からないだろう。しかし、神楽が笑うと神悟もつられるように笑っていた。

「総悟。神悟の分のプレゼント。ちゃんと用意してるアルか?」

機嫌の好さそうな声で、神楽が話しかけてきた。

「あぁ。たぶんもうそろそろサンタさんが来るはずでさァ」

「可哀そうなマヨアルな。部下に使われるなんて。今回はどう言った脅しをかけたアルか?そーご君」

「なーに。単にマヨの中に砂糖入れるって言ってやったら大人しくしたんでィ。あいつはマヨが命だからねィ。マヨさえ潰せばこっちのもんでさァ。神楽ちゃん?」

「はぁー…。あなたのパパは恐ろしいでちゅねー?神悟君は、パパみたいになっちゃだめヨ?マミーに似るヨロシ」

「なに言ってんでさァ。神悟は俺の血をもろに受け継いでるんでィ。お前もSだから神悟は結局Sなんでさァ。しかもツンが入ったねィ」

「うぅ。恐ろしい子供アルな」

神楽が自分の頬を神悟に擦り寄せている。ちょっとだけ神悟に嫉妬したのは誰にも内緒だ。自分の子供に嫉妬って。まぁ、それほどまでに神楽を愛してるからとでも言っておこう。

実際、それだけの言葉では表す事の出来ないくらい、神楽への想いは大きいのだ。こんな簡単な言葉で申し訳ないくらい。

「もうすぐしたらサンタさん来るからなァ。それまで外行ってみんなで雪だるま作るかィ?」

「雪だるま作りたいアル!!!」

「神悟に言ったんでィ。いい年こいて雪ぐれぇーで喜ぶな。あほ」

「だって雪アルよ!綺麗だし、冷たいし、それにかき氷したらおいしそうアル!!」

「結局食べモンかよ」

お互い目を合わすと、どちらかともなく笑い合った。まだたどたどしいが、神悟を下すとヨチヨチと歩く。それに合わせて俺と神楽は手をつないで玄関まで向かった。

「なんか、新婚の時みてえだな」

「総悟の手、あったかいアル。それに、まめだらけネ」

「いつも刀やらバズーカやら竹刀もってりゃァそうならァ。でも、自分が今までやってきた証みたいで、俺は好きだねィ」

「そんなものアルか?」

「そんなもん」

ふーん。そう言いながら俺の手をさっきよりも強く握る神楽。神楽の手は、いつも傘を振り回したり、エイリアンを倒したりしているのにマメ一つない綺麗な手だ。

「ぱぱぁー!ちゅりー!ちゅりー!!」

「ツリーな」

神悟が小さな指を庭先のツリーに向けてさす。おぉ。土方コノヤロー間に合ったみたいだな。ちゃんとツリーの下にプレゼント置いてあらァ。

「これが神悟のプレゼントアルか?」

「おう。ほれ、神悟ォープレゼントだぜィ」

「プレジェントー!!!」

袋を開けた神悟。その袋の中身を見て一番驚いたのはほかでもない神楽だったとか。





江戸は今日も平和です。

(SMグッズじゃねぇぇぇかァァァァア!!!)
(やっぱり神悟もSになる身だからねィ)
(そう言う問題じゃないアル!!!!)





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あいさちゃん。

なんだか最後はストンと落ちる結果になっちゃったよ(;_;)

書き直し要求可能ッス!!!


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