「学級委員は、前に出て今週金曜日にある集会に向けての話し合いを行ってください。先生は、今から出張があるので立ち会いはできませんが、皆さんからの良い意見を待っています。学級委員は・・・神楽さんだから大丈夫ね」

それじゃ。と言って、担任教師は教室を出て行った。それと入れ替わりのように教卓の前に立ったのは、我らが誇る学級委員の神楽だ。成績優秀、運動神経抜群、おまけに顔も良いときた。彼女を狙っているものならそこいらにわんさかいる。

それに、彼女は誰にでも分け隔てなく接するため、女子からの人気も高い。つまり、老若男女問わずに好かれるタイプなのだ。彼女が羨ましいと思うのは、俺だけではないだろう。ましてや、彼女に話しかける事の出来るのは彼女の一番の親友であり、良いとこのお嬢さんである徳川そよ。その他数名くらいだ。

彼女と是非ともかかわりたい俺だが、生憎彼女に話しかける事は勇気の欠片もない俺では不可能に等しい。というより、元々俺は人前で何かをしたり、皆をまとめるような役割が苦手なのだ。彼女との性格は月とすっぽん。まったく逆であり、差が激しいのだ。

「ほい、じゃあ会議を始めるアル。っていっても、簡単な議題しかないから・・・。5分で終わらせて後は皆でパラダイス銀河ヨ!」

その一言に、クラス中から『おぉ〜』といった歓声があがる。

「まぁ、その為にはクラスのみんなの意見が必要なわけで…はい。じゃあ最初、沖田君。何か意見を言って欲しいヨ」

また、その一言でクラス中の視線が集まる。うわ、蕁麻疹でてきそう。でも、彼女から話しかけて来てくれる(とんだ勘違い)事に過度の喜びを得た。しかしだ。ここは適当に流そう。そうすれば早く終わる。しかし彼女と会話する事は嬉しい。と言っても一カ月に数回だが。

「募金してもらえばいいと思いやす」

あぁ。我ながらありきたりな意見を言ってしまったと思う。彼女が見ている前で、しかも小さな声。似合わねえ。

「あぁそうか!募金してもらえば済むアルか!じゃあ募金で良いアルな!沖田君、グッドアイディア!!!」

親指を立ててウィンクして。俺を殺したいのか何かは知らないが、とにかくかわいい。彼女の席が俺の隣で良かった。本当に。でも、あんまり話はしないのだけれども・・・。そこはあえて突っ込まないでおこう。

「5分もかからなかったアルな。皆、パラダイスアル!好きな事して良いアルよ!」

その声により、クラス内ではトランプをしたり、雑誌を読んだり、携帯をいじったりと、皆がそれぞれ好きな事をやっている。俺は特に何をするでも無いので机に突っ伏して寝ることを決めた。しばらくして、誰かが俺の肩をツンツンと指してくる。

誰だろうと思い、顔をあげて指してきた人の顔を見ると、そこには俺の瞳に映されたドアップの彼女の顔。こんな正面で、しかもドアップで拝んだ事はないかったので、一瞬息が詰まる。

「沖田君、どうしてみんなと遊ばないアルか?」

「・・・そういう気分じゃないからでさァ」

最悪だ。彼女への印象はもう、本当に最悪だ。でも、こんな本当の会話したの初めてだ。まるで、クリスマスにサンタを見たとはしゃぐ子供みたいに今、すげえはしゃぎたい。

「ふーん。じゃあじゃあ、どうしてそんなカッコイイのに、告白して来てる女の子たちフっちゃうアルか?」

「好きな人が違うから」

「へぇ。好きな人がいたアルか!沖田君、誰とも話さないし、授業中も寝てばっかりだから話しかけにくかったのヨ。でも今日は見直したアル!本当にグッドアイディアヨ!」

「あ、りがとうございまさァ」

久しぶりに言った気がする。『ありがとうございます』なんて。姉さんにしか言った事無かったのに。でも、やっぱり人と話すって面白いし、楽しい・・・気がする。なんだか、今まで静かにしてきたのがバカらしく思えてくるほど、今、彼女と話しているこの一時が嬉しい、楽しい。

もう、一か月分は彼女と話せた気がする。

「あら?神楽ちゃん。沖田さんとお話中ですか?」

突如現れた徳川。どこかニヤニヤしているのは俺の見間違いか?

「よかったですね、神楽ちゃん?沖田さんとお話したいって以前から言ってましたものね?」

「そ、そよちゃん!!!」

顔を赤らめる彼女。これは、まさかの展開なのか?そうなのか?・・・自惚れてもいいのか?

「本当はこの問題が分らなかったから神楽ちゃんに聞こうと思っていたのですが・・・。どうやら私はお邪魔者らしいです。すぐに戻りますんで、そんなに睨まないでください。沖田さん」

「・・・へ?」

「沖田君?どうしたアルか?眉間、皺が寄ってるアル」

無意識の行動だったのかもしれない。なんて失礼なことをしてしまったのだろう。徳川は何にも悪くないのに。

「あの、神楽さん?」

「何アルか?」

「これからも、その・・・話しかけても良いですかィ?」

「・・・そ、そんなの、聞かなくったっていいに決まってるネ。私も、沖田君とお話したかったから」

そう言って微笑む彼女。この笑みは今は俺だけのものだ。そして、これからも俺だけのものにしたい。そう思った。初めて俺が欲しいと思ったもの。誰にも譲りたくない。

「沖田君」

「へ?」

「メアド。交換しようヨ!」

今日はなんてすばらしい日なんだろう。

彼女は携帯を取り出して、赤外線を要求してきた。それに答えない奴はいないと思う。絶対に。

「へへっ。初めて男の子とメアド交換したアル」

微笑む彼女は天使だ。



勿論、俺だけの。





貴女(貴方)を下さい

誰にも譲る気なんてありません。






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恵子さまへ捧げます。

沖田は・・・・

これは内気なのか?

そう、問うたくなるような文。

申し訳ありまっせーん!!!

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