神楽が以外にも寂しがり屋だと知ったのは、神楽が風邪で寝込んでしまった時。

汗ばんだ肌が妙に艶めかしかったりだとか、そんな気持ちを例え血の繋がっていない妹とは言え持ってはいけない事だとは思ったのだが、生憎俺は、そんな綺麗な心を持ち合わせちゃいない。

まだまだいっぱいあるのだ。神楽の知らない、俺が。

そして、俺の知らない神楽が。

今日は、幸運なことに講義もなければ神楽の学校用事もない。小学校の頃は、休みの日は外へ遊びに行きたい年頃だったのだが、中高大へと進むと比例するように家でまったりしたくなる。

それは神楽も同じなのか、今現在AM11時越えをしているが全くと言っていいほど起きてくる気配がないのだ。

まぁ彼女は平日は早起き型だが、休日は遅起き型。これは、神楽と生活し始めてはじめて分った事。

ちょうど11時10分を超えた頃、ようやく神楽起きてきた。

「おはようございますヨー・・・」

「おはよう」

眼をこすりながらドアを開ける神楽に、俺の中の何かがはねる。いや、何かなんて事はとっくの昔に気付いてる。でも、どうしてもそれを認めるわけにはいかないだけだ。

そんな感情、俺たちの中では持ってはいけない。綺麗な心なんて持っていなくとも、自然と理性がそれを止めてしまうのだ。

「総悟は、今日は講義ないアルカ?」

「あぁ。今日はなし。明日は昼から入ってるけどねィ」

「そうアルカ!あ。おなか減ったアル」

「そこのレンジのなかにフレンチトースト作ってありまさァ」

「マジでか!ありがとうアル!!お兄さーん!!!」

ギュッと俺に抱きつく神楽。こんなんされちゃ、いくら理性が働いてたって、脆くも儚く崩れ去って行くわけで。でもどうにか気を確かに持って踏ん張って耐えた。

畜生。可愛い奴め。

どうして俺はこの子に恋をしてしまったのだろう。血は繋がってないとは言え、れっきとした兄妹なのだ。

傍から見れば仲のいい兄妹。だが、神楽は知っているのだろうか。神楽を想う、俺のやましい心に。気づいているのだろうか。神楽を、こんなに愛しく想う俺の感情に。

親が今この場にいないから悩める悩みだ。もしこの場に親がいたとしたら完全にバレるだろう。俺の親父はともかく、義母に。

正面に立ちはだかる壁は大きい。

俺は、その壁を超える勇気も気力も体力も、たぶんない。

目の前でおいしそうにフレンチトーストを頬張る彼女を、遠くから見つめることしかできないでいるのだ。

「総悟?」

「どうしたアルか?眉間、しわが寄ってるアル」

そうとう悩んだのであろう。

首をかしげてキョトンとした表情の神楽は、なんとも言えないその可愛らしさを十分に引き出している。狙っているのだろうか。これは。


「大丈夫でさァ。・・・・大丈夫・・」



なんだか、距離を感じた気がした。









・・・

乃亜


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