体の弱い彼女のため。そう思いいつも以上に仕事をこなして早めに会社を後にする。

コートに突っ込んだ手の先には、今朝、彼女から貰ったカイロがあった。まだ十二分に暖かいそれを強く握りしめる。

「…やべ。プレゼントなんて用意してなかったな…」

12月のメインイベントと言えばクリスマスであろう事は、10人中約9人が答えるような事だ。

彼氏彼女が在る奴らはそれに向けて貶しの金を稼ぐためにバイトやら仕事やらを必要以上に頑張る。

以前まではくだらないと思っていたそれを、いまでは迷いもせずに自分もやっているというとこに、笑いさえ出てくる。

どこで変わっちまったんだか。

帰路につく途中、非常に珍しい光景を目にした。これはきっと後々で役に立つだろう。

視線の先には、一瞬彼女の髪色と間違うような栗色。しかし良く見ればそれは彼女の弟のものであって、決して彼女ではない。

そして、普段の奴からは想像もできないほどの表情ときた。一緒に居るのは誰だ?彼女か?

外人かと思わせるような瞳のブルーと桃色の髪に、雪と溶け合うような白色。

それ以上に驚いた事は、奴の表情をこうも簡単に崩してしてしまう彼女だ。自然と口元がゆるんでしまう。

やっと弟分は恋を覚えたか。

不と頭に浮かんだのはそれだった。

彼女の弟が選んだ相手ならきっと大丈夫。根拠はないのにそう思ってしまうほど、奴の表情は穏やかだった。




* * *



電車に乗って、窓の外を見ているとそこは微かに雪が積もっていた。

「雪、降ってたのか」

気付かなかった。というのも、プレゼントはどうしたものかと考えていたから。

気づけば雪が降っており、気づけば既に自分が下りる駅になっていた。

「そう言えば。…傘持って来くればよかったな」

仕方ない。赤くなった鼻を隠しながら、電車を降りて雪道を歩く。

途中途中で見えているクリスマスツリーやらイルミネーションやらを眺めていると、帰宅途中で見かけた栗色。

………。

「…。あ、十四朗さん」

にこりと微笑み、赤のチェック柄の傘を傾ける。右手にはもう一つの傘。

「はい。これ使ってください」

「……ここで待ってたのか?ずっと」

「いいえ。ついさっき来たばかりです」

吐き出す息が白い。

でも、彼女が嘘をついてる事くらい分る。傘を渡されたときに微かに触れた手の冷たさとか、彼女の栗色の髪にうっすらと雪が解けて濡れているところとか。

「…すまねえ。もうちょっと早く帰るつもりだったんだけど」

「いいんですよ?そうだわ!これ、十四朗さんにプレゼントです」

彼女のコートから取り出された小さな包み紙。

「…悪ィ。俺プレゼント用意してねえーんだけど」

「いいんです。私が好きで渡しただけですから。私は、……と、十四朗さんが傍に居てくれるだけで、本当に幸せなんです」

冷たい手で本当に驚いたが、それ以上に動揺してしまったのは、彼女が俺の手を握ってきたから。

瞼を伏せるようにして、顔を隠しているようだがバレバレだ。

「……今度、ちゃんとしたのやるから」

あげられた顔はやはり赤かったが、普段では見る事が出来ないくらいキョトンとした彼女の顔に、たまらず唇を寄せた。




彼氏彼女が在る奴らはそれに向けて貶しの金を稼ぐためにバイトやら仕事やらを必要以上に頑張る?

当たり前じゃねえーか。

大切だから、少しでも長く一緒に居たいから。


「ホワイトクリスマスですね?」


隣で微笑む彼女を『愛してる』から、だろ?





コラールを唄って

神聖なる神

彼女と出会えたのは運命というものか…





______________


結季様…

どうしてこんなに文才がないのか。

どうしてこんなに駄作が次々と生まれてくるのか


本当にすんまっせーん!!!!!!


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