初めて彼女と手をつないだ日。恥ずかし過ぎて、頭から湯気が出そうになった。
初めてキスをした日。『キス』って言葉を言うのが恥ずかし過ぎて、『ちゅーしよう』って言ったら爆笑された。
初めて彼女と秘め事をした日。あまりの彼女の可愛さに調子に乗ってもう一発したら、殴られた。
そして、初めて彼女にプレゼントする日。つまりは今日。ピンクの紙袋片手に、マフラーを鼻までかぶせて彼女との待ち合わせ。
どのタイミングで、どういう風にプレゼントを渡せばいいのか、しっかりシュミレーションすればよかった。
なんだ、これ。俺ってすげぇーヘタレじゃん。
「おきたー!」
この寒い中、ミニのスカート穿いて走ってくる彼女に、頬が緩む。
「つか。お前くんのおせェーよ。何十分待たせたと思ってるんでィ」
「お化粧してたら家出るの遅くなったアル。そんなに寒かったら、手、繋ぐアルカ?」
はい。
そう言って、左手を差し出す神楽に、ぽかんとなってしまう。数秒して、整った眉をひそめた神楽に、ヤバイ。そう思ったのも、それと同時だった。
「・・・沖田、私と一緒に居て詰まんないアルか?」
「別にそんなんじゃねーし」
「ふーん。やっぱ今日は帰らせていただきますヨ。お前、今日何か変アル」
「ちょ。待てって」
本気で帰ろうとする神楽を慌ててひきとめる。あ、やっぱり腕細いな。折れちまいそうでィ。
「普通だから。お前と居て詰まんねえなら、もう俺帰ってるし。つか、詰まんねえなんて思えねえから」
「・・・・・・。まぁ、いいアル」
よし。
なんとかひきとめた。
「沖田?その手に持ってる袋、何アルカ?」
しまった。もう気づかれた。
「あぁ、これはアレでィ。・・・鼻がみティッシュ」
「意味分んねえヨ。無理やり過ぎネ」
「おう。無理ありすぎたな。・・・確かに」
「ほんと、どうしたアルカ?なにか悪いものでも拾い食いしたアルか?」
なんだか、本気で心配になってきてしまったヨ。
そう言う神楽に、これほどまでに愛情を抱いた事があったのだろうか。いや、いつも平等に愛は捧げているはずだ。
でも、何というか、一言でいえばムラムラするというか、俺の何かが燃えてくるみたいな。
とにかく、好きだ。
「阿呆。全部丸聞こえアル!そんなに私を羞恥死させたいアルか!?」
「本当の事を言ったまででさァ。いいだろィ?別に」
「・・・・・・許すアル」
「おう」
紙袋を持つ手に、少しだけ力を込める。
しわが寄っているけど、そんなの無視しよう。だって、たぶんだけど、この女にはそんな事どうでもいいだろうから。
って、あれ?俺の思考は全てアイツで回ってる気がすんだけど気のせいか?
「あっちに、イルミネーションがあるんでさァ。その、一緒に行かねえ?」
「いいアルヨ。私も見たいなって思ってたところアル!」
「じゃ、行くか」
つかんだ腕もそのままで、俺は歩きだした。それと同時に、神楽も歩きだす。
いつもはこんな細っちい腕で、俺を殴ってんだ。とか、地面を真っ二つにしそうな勢いで蹴りを入れてくるのに、そんな事、全く感じさせない脚。
何もかもが愛おしい。
「あ。そうだった」
途中で思いついたプレゼントの渡し方に、頭の上に豆電球がついたような感覚がした。
「神楽。これ・・・」
くそ。頬が緩んでしかたねえ。
「なにアルカ?」
首をかしげて見上げてくる神楽。なに?これは狙ってんの?
どうやら彼女は、俺を萌え死にさせたいようだ。
「どうせ似合わねえ―と思うけど、一応」
ヘタレ。
そう聞こえてきた声は、なんだかとても嬉しそうな声だった。
白色恋白書
「どんなの買えばいいかわかんなかったから、一応下着で」
「…おい。わざわざランジェリーショップにまで行ったのかヨ」
「そういえば、変な視線を感じたような気がしたねィ」
「バカだろ。・・・顔、真っ赤アル」
「寒さのせいでィ」
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あれ?どこら辺が不器用?
おもっくそ、ヘタレな沖田君じゃないですか!!!
ほんと、すみまっせーん!!!
し・か・も!!!
恥ずかしがりながらプレゼントをわたすのにもかかわらず!!!
こんなものでも、貰っていただけたら嬉しいです(;_;)