たかが高校生。されど高校生。そのため、高校生が収入できる金額は底知れている。
ましてや、彼女がいる男ならクリスマスにお金が飛ぶ事は承知しているだろう。それに、その彼女の弟がシスコンならばなおさら、金が飛んでいく可能性は高い。
まさに、その境遇の中に居る土方は、クリスマスが近づくにつれ、頭を抱える時間が多くなっていた。
クリスマスは、一緒に過ごしてください。そう、微笑んで言ってくれる彼女に、顔は赤くなるものの、そんな顔見せられない。
目が合う寸前、反らしてしまうという、なんとも言えない自分のヘタレさ。
「はぁ…」
溜め息だけが、帰り道の通学路に溶けて消えた。
一日中使われていた(ここ重要)携帯は、すでに電池切れ。携帯を制服のポケットにしまうと、顔の半分をマフラーの中にうずくめた。
「…やっぱり、プレゼントっているよな…」
マフラーの中で話したため、声が少しくぐもる。いきがしづらくなるのを感じたが、気にせずに帰り道を歩くことにした。その時。
「へェ。バイトか。……やってみっかな…」
彼女のために。
なんて、彼女の前では言えないけれど…。
* * *
「十四朗さん。一緒に帰りましょう?」
HR終了後、彼女であるミツバが、駆け寄ってきた。体弱いのに、あんまり走るんじゃねえ。心配するだろーが。
「いや…。ちょっと今日は用事があって。すまねえな…」
「いいですよ。今日は総ちゃんと神楽ちゃんと一緒に帰ります。今度、一緒に帰りましょう?」
「あぁ…」
こんな短い会話でも、幸せだと考える俺。きっと、ミツバも同じなんじゃないか。自意識過剰にもほどかあると思う。でも、そうでいてほしい。
こんなの、総悟がきいたらブチ切れるだろうと思いながらも、クリスマスのためのプレゼントを買う金は確実にたまって来ていた。
しかし、金がたまったはいい。それからが問題だ。一体、女は何を貰えば嬉しくなるのか。本人に聞くわけにもいかずに、そのあとは、バイトの事よりもずっと頭を抱えた。
俺がバイトをしているのは、ちょっとしたカフェで、いまどきで言うシャレた店だ。
バイトが終わった後に、店長に呼ばれて、今日分の給料をもらった。
「あぁ、そうだった。土方君。ちょっといいかな?」
「はァ。大丈夫っすけど。…何か用事でもあるんですか?」
「そう言えば、彼女にプレゼント買うためにバイトしたいって言ってたよね。クリスマスに、予約されていたケーキがキャンセルになったんだ。貰っていかないか?」
「いいんすか?店の売りもんを」
「あぁ。いいよ。キャンセルだし。もう予約期間は過ぎてるしね」
「じゃあもらいます」
「そうしてくれると助かるよ」
笑いながら腕を組む店長に、本当に心から感謝した。うん。本気で。
家に帰って、すぐに充電切れの携帯を、充電した状態で開く。迷惑メールが数十件。勘弁してほしい。
削除していく中に、見慣れたアドレスを発見した。体中のいたる穴から、変な液が出そうなくらい、俺は硬直した。
送り主はミツバの弟。つまりは総悟だ。
ふるえる手で、メールを開く。
そこにあった内容は、あいつの惚気。こっちにも勘弁してほしい。あいつなんかの惚気を聞いて嬉しがる奴がいるのか?…いた。ミツバだ。
スクロール数が長いのにイラつく。
『土方さん、俺クリスマス彼女と一緒に遊び行くんでさァ』
どうでもいい。
『だから、特別に姉上と一緒にいるの許してやらァ』
マジでか!!
多分、あいつにメールの返信をしてもくだらない内容だと思うから、あえて返信はしないでおいた。
これでクリスマスは二人っきり。何とも言えない嬉しさがこみ上げる。
最高じゃねえーか。
* * *
「じゃ、邪魔するぞ」
恐る恐る、彼女の家に入っていく。足取りは、重い。
彼女のために買おうと思っていたプレゼントは、手に入れた。我ながら、ありきたりなものを選んだと思う。
「十四朗さん、いらっしゃい」
玄関に迎えに来た彼女の私服すがた。大人びていて、可愛いというより綺麗が似合っている。
「総ちゃんは今日、神楽ちゃんと一緒に遊園地に行っているみたいなの。ゆっくりしていってくださいね?」
「…そうするつもりだけどな。せっかく、二人きりだし」
「そうですね。あら、そうだったわ。忘れるところだった」
そう言って、ミツバがとりだしたのは、ブルーの袋。
「ありきたりなんですけど…。きっと、十四朗さんなら似合うと思って買ったの。本当は、手作りがよかったのだけど…入退院が重なってしまって…」
困ったように笑うミツバ。買い物でもいい。ミツバが、俺にくれるものなら、たとえそれがどんなものであれ嬉しいに決まってる。
「…あり、がとう…」
畜生。テレたりなんかしねえって、誓ってたのに。
「あのさ、これ、やる。…その、クリスマスプレゼントって奴だ」
無愛想すぎるだろ、これ。前々から瞳孔は開いていると自負してはいたものの、無愛想すぎる。
「これを、私にプレゼントしてくれるために、わざわざバイトをしていたの?」
「…誰から聞いたんだよ」
「総ちゃんが言ってたの。十四朗さんがバイトしてるって。だから、一緒に帰れない間は、神楽ちゃん達と一緒にと思って」
「……べ、別に、お前のためなんかじゃねえよ」
うつむいて、赤い顔を隠す。すると、となりから聞こえるのは笑い声。
「ふふふっ。…ありがとうございます。大好きです。十四朗さん」
「……俺もだ」
こんなの、総悟に聞かれてでもしたら、確実に殺される。それだけは勘弁だけど、いつか、彼女と、暖かい家庭を持てたら。なんて考える俺は欲張りだろうか。
ほんと、殺されるな。
最愛と呼ぶには早すぎるけど
彼女は俺の最愛なんだ
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紫菜様…先にお詫びを申し上げます。
すみませんでした!!!
あれ?これのどこが3Z?
ケーキはどこいった?
プレゼントの中身って?
つか、バイト関係なくね?
疑問点が多々ありすぎて、良く分かりませんよね…。
ほんと、文才のなさにあきれて『何も言えねえ』←
本当にすみませんでした。
煮るなり、焼くなり、焦がすなり、田んぼにポイなり、好きにしてやってください。